カレントテラピー 32-10 サンプル

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10 Current Therapy 2014 Vol.32 No.10958には骨密度データを加え改訂された.しかしながらスコアリングによる診断基準を臨床応用した結果,十分な鑑別診断が実施されずにスコアのみで診断が行われることが問題となった.これは本疾患の患者数がきわめて多く,さまざまな診療科でその診断と治療が実施されていることを反映したものである.このような背景から整形外科,内科,婦人科,放射線科など関連診療科の意見を集約して,1995年に新たな診断基準が日本骨代謝学会により作成された(表2)7).この基準はWHOの基準を原型として,椎体骨折の有無により骨密度値のカットオフ値を2段階としたわが国独自の基準である.椎体骨折の有無により骨折リスクが異なることを盛り込んだ基準は国内外を通じて初めてであり,国際的に最も先進的であったと言える.この診断基準もWHOの診断基準と同様にSDをカットオフ値に採用した.わが国では前腕骨専用の骨密度測定装置や第2中手骨を測定対象とした測定方法が普及しているが,それらの測定値ではSD値が小さく,若年健常者の-2.5SDをカットオフ値に用いることが困難である.そこで1996年度にSDによるカットオフ値を%表記に改め,測定部位が異なっても同じカットオフ値を用いることを可能とする改訂版が発表された8).2000年には,低骨量の評価には原則として骨密度値を用いること,椎体骨折のみではなく他の脆弱性骨折を含めその有無でカットオフ値を2段階とすること,という改訂が行われた9).これは,X線像による骨量低下の評価が困難な例が存在するため,できる限り骨密度測定値を用いる必要があったことが挙げられる.Ⅴ 診断基準2012年度改訂版2000年度改訂版の診断基準が10年間以上にわたって使用されてきたが,2000年度版が発表された後に集積された臨床疫学データに基づいて2012年度に改訂が実施された(表3)10).2012年度版ではそれまでの2000年度版の問題点の指摘から,以下の点で改訂がなされた.①既存骨折種による分類の追加,②骨密度の測定部位を原則として腰椎または大腿骨近位部とする,③大腿骨近位部骨密度の若年成人平均値(YAM)は20~29歳を基準とする,④骨密度に関して%表記にSD表記を併記,⑤腰椎骨密度はL1~L 4, L 2~L 4を併記.さらに, 低骨量をきたす骨粗鬆症以外の疾患または続発性骨粗鬆症を認めず,骨評価の結果が下記の条件を満たす場合,原発性骨粗鬆症と診断する.表3原発性骨粗鬆症の診断基準(2012年度改訂版)〔参考文献10)より引用〕Ⅰ.脆弱性骨折(注1)あり1.椎体骨折(注2)または大腿骨近位部骨折あり2.その他の脆弱性骨折(注3)があり,骨密度(注4)がYAMの80%未満Ⅱ.脆弱性骨折なし骨密度(注4)がYAMの70%または-2.5SD以下YAM:若年成人平均値(腰椎では20~44歳,大腿骨近位部では20~29歳)注1 軽微な外力によって発生した非外傷性骨折.軽微な外力とは,立った姿勢からの転倒か,それ以下の外力をさす.注2 形態椎体骨折のうち,3分の2は無症候性であることに留意するとともに,鑑別診断の観点からも脊椎X線像を確認することが望ましい.注3 その他の脆弱性骨折:軽微な外力によって発生した非外傷性骨折で,骨折部位は肋骨,骨盤(恥骨,坐骨,仙骨を含む),上腕骨近位部,橈骨遠位端,下腿骨.注4 骨密度は原則として腰椎または大腿骨近位部骨密度とする.また,複数部位で測定した場合にはより低い%またはSD値を採用することとする.腰椎においてはL1~L4またはL2~L4を基準値とする.ただし,高齢者において,脊椎変形などのために腰椎骨密度の測定が困難な場合には大腿骨近位部骨密度とする.大腿骨近位部骨密度には頸部またはtotal hip(total proximal femur)を用いる.これらの測定が困難な場合は橈骨,第二中手骨の骨密度とするが,この場合は%のみ使用する.付記: 骨量減少(骨減少)〔low bone mass(osteopenia)〕:骨密度が-2.5SDより大きく-1.0SD未満の場合を骨量減少とする.