カレントテラピー 32-10 サンプル page 6/32
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カレントテラピー 32-10 サンプル
Current Therapy 2014 Vol.32 No.10 9957果,骨密度では評価ができない骨の「質」の悪化も骨強度低下をもたらすと考えられるに至った.そこで,2000年に米国国立衛生研究所(NIH)で開催されたコンセンサス会議で,骨粗鬆症は“骨強度の低下を特徴とし,骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患”と修正された2).「骨強度」は骨密度と骨質の2つの要因からなり,骨密度は骨強度の約70%を説明することも示された.残念ながら,現時点では骨質を臨床的に使用可能な検査で評価することはできない.したがって,骨粗鬆症の診断では骨密度に加えて骨密度以外の骨折リスクに関わる要因が用いられる.Ⅲ 骨折リスクに関連する要因骨折リスクは骨密度低下,脆弱性骨折の既往,加齢により上昇し,これらの要因はそれぞれ独立して骨折リスクに関連する.骨密度測定法は1980年代後半に長足の進歩を遂げ,X線を使用し高精度で短時間に測定できる骨密度測定装置が臨床応用されるに至った.そこで骨密度を基にした多くの臨床疫学の知見が集積され,骨密度が骨強度をきわめて良好に説明することが明らかとなった.骨密度が1標準偏差(SD)低値である場合の骨折発生の相対危険度は1.5~2.5倍程度高まる3).脆弱性骨折の既往も加齢や骨量減少とは独立して,骨折のリスクを上昇させることがよく知られている.メタアナリシスの結果4)では,前腕骨折の既往は前腕,椎体,大腿骨近位部の骨折リスクをそれぞれ3.3倍,1.7倍,1.9倍に上昇させる.椎体骨折の既往はそれぞれ1.4 倍,4.4 倍,2.3 倍上昇させる.この結果は脆弱性骨折が生じると,同じ部位の骨折とともに,身体の他部位の骨折リスクも上昇させることを意味している.加齢も他の要因とは独立した骨折リスクである.すなわち骨密度,脆弱性骨折の既往などの背景が同じであれば,年齢が高いほど骨折リスクが高い.これは加齢に伴って転倒リスクが上昇する,転倒時の防御的な対応が困難となる,骨質が悪化するなど,臨床的な指標では評価できない要因を反映していると推測される.さらに,WHOの提唱した骨折リスク評価ツール(FRAXR)では,上記のほか,大腿骨近位部骨折の家族歴,飲酒・喫煙が脆弱性骨折のリスクファクターとして挙げられる5).Ⅳ 診断基準の変遷WHOの研究班が1994年に骨粗鬆症の新しい診断基準を提唱した(表1)6).この基準では骨密度が若年健常者の-2.5標準偏差(SD)未満を骨粗鬆症と診断し,骨折を有する例が“established osteoporosis”と定義された.わが国では,1988年に厚生省シルバーサイエンス骨粗鬆症研究班によって骨量減少と臨床症状をスコア化して診断する診断基準が提案され,さらに1993年表1 WHOの骨粗鬆症診断基準(1994年)Normal:BMD is within 1 SD of a“ young normal”adult(T-scoreat -1.0 and above).Low bone mass(“osteopenia”):BMD is between 1.0 and 2.5 SD below that of a“ youngnormal”adult(T-score between -1.0 and -2.5).Osteoporosis:BMD is 2.5 SD or more below that of a“ young normal”adult(T-score at or below -2.5).Patients in this group who have already experienced one ormore fractures are deemed to have severe or“established”osteoporosis.〔参考文献6)より引用〕表2 原発性骨粗鬆症の診断基準(1995年)Ⅰ.X線上椎体骨折を認める場合骨量減少〔骨萎縮度Ⅰ度以上,あるいは腰椎骨塩量値が若年成人平均値(YAM)の-1.5SD以下〕を伴い,非外傷性椎体骨折を認めるものを骨粗鬆症とする.Ⅱ.X線上椎体骨折を認めない場合脊椎X線像腰椎骨塩量値*正 常骨萎縮なし骨量減少骨萎縮度Ⅰ度-1.5SD以下**骨粗鬆症骨萎縮度Ⅱ度以上-2.5SD以下*:腰椎骨塩量値はYAMを基準値とする.**:-1.5SD≧,>-2.5SD〔参考文献7)より引用〕