カレントテラピー 32-10 サンプル page 17/32
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カレントテラピー 32-10 サンプル
Current Therapy 2014 Vol.32 No.10 75代替療法1023確認された場合,全身性感染症または骨折した椎体の局所感染症を有する場合,出血性素因を有する場合などがある.最近は椎体後壁骨折がある症例にも少しずつ試みられている報告が散見されるが,合併症が起こらないように慎重に適応を選ぶべきである.Ⅲ Vertebroplastyの治療結果,問題点とその対応策われわれは前述の適応基準を順守し,原則として後壁損傷がない椎体骨折に対してはBKPを施行し,後壁損傷があり神経症状を有する例に対しては,骨折椎体には椎体形成術,加えて後方除圧+後方固定術を行っている10).BKPにおける詳細な手術手技については他の論文を参考にされたい11).概略を述べると,当該椎体レベルよりやや頭側に左右1cmの皮切を置き,経椎弓根的にneedleを挿入する.この際には脊椎の解剖に精通する必要がある.セメントの注入は漏れがないように透視を用いる.手技的に慣れれば30~40分で終了し,出血量は少量である.われわれの結果を含め,多くの報告では術後翌日から著明な疼痛の軽快が認められている(図1).このように即時的な疼痛の軽快が本術式の最大の特徴である.また,術前に不安定性を有し疼痛の原因になっていた骨折椎体は,セメントを挿入することにより安定化する.この局所の安定化が疼痛の軽快をもたらすと考えられている.BKPは疼痛の軽快に伴ってquality of life(QOL)の改善をもたらすことが明らかになっている11).低侵襲で臨床的な症状の改善が期待できるため,現在わが国では多くの施設で施行例が増加している.しかし,BKPにはいくつかの問題点,合併症が指摘されている.早期に起こる全身の合併症としては,セメント注入時の血圧低下など心肺機能の問題がある.本手技が予備能の少ない高齢者に多く行われていることから,この合併症の危険性は大きいと思われる.これはセメントの生体毒性が関与しているのかもしれない.さらに,肺におけるセメントの硬化という頻度としてはきわめて少ない合併症が起こり得る.これは,モノマー状態のセメントが静脈に入り肺まで移動してセメント塊をつくるためである.よって,椎体内にセメントを注入するときには十分な時間をかけてから行うことが注意点として挙げられている.局所の合併症で最も注意しなければならないのは,セメントの脊柱管内漏出による神経症状出現の可能性である.後壁損傷がある症例ではこの危険性が高くなると考えられるため,手術適応を順守すべきであろう.ただし手術適応を順守したとしても,脊柱管内のみならず隣接椎間板内にセメントの漏出は起こり得る.また,セメントを注入した椎体自身が破壊されて不安定性をきたす症例もある.われわれの施設でも,セメントを注入した椎体の骨折が起こり,前方および後方固定を余儀なくされた症例を経験している(図2).そのため,基本的にはこれらに対するsalvage手術ができる施設でBKPは行われるべきである.晩期における全身的な合併症は少ない.それは手術がうまく行われれば,多くの症例で早期の離床を促すことが可能であるためである.一方,晩期の局所合併症として注意すべきは隣接椎体骨折である.元来骨粗鬆症のある椎体へ非常に硬いセメントを入れるため,隣接椎体には力学的負担が加わる.これまでの報告では,BKP後の隣接椎体骨折の頻度は30~40%とされている11).この隣接椎体骨折に対しては,近年テリパラチドを使用することによって頻度を低下できることが報告されている12).椎体骨折は骨粗鬆症を基盤に発生しているので,強力な骨粗鬆症治療薬を用いることは理にかなっている.今後さまざ88.346.736.3 400102030405060708090100術前術後1日術後1週術後1カ月n=40(mm)図1 BKP術前後のVAS値(mm)術後翌日から明らかなVAS値の低下が認められる.