カレントテラピー 32-10 サンプル

カレントテラピー 32-10 サンプル page 11/32

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 32-10 サンプル の電子ブックに掲載されている11ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 32-10 サンプル

56 Current Therapy 2014 Vol.32 No.1010043 OSXOSXは骨芽細胞分化を促進するサイトカインのBMP2により誘導される転写因子である.OSX欠損マウスは,Runx2の発現がほぼ正常であるにもかかわらず,骨芽細胞を完全に欠損する7).一方,Runx2欠損マウスではOSXの発現がほとんど見られない.したがって,OSXはRunx2の下流に位置するものと考えられる(図1).また,他の転写因子と同様に,OSXもNFAT1cやp53といった転写因子と協調的に骨芽細胞分化を調節する(図1).OSXは発生時の骨芽細胞分化作用に加え,出生後の骨芽細胞や骨細胞の機能にも重要な作用を果たす.最近,マウス新生児期のOSX陽性細胞が間葉系幹細胞へと分化転換することで多能性を獲得し,成体における脂肪細胞,軟骨細胞などのさまざまな細胞へと再分化し得ることが明らかとなった8).4 AP1ファミリーAP1ファミリーに属する転写因子も骨芽細胞分化において重要な作用を担う.FOSBのアイソフォームであるΔFOSB,また,FRA1の過剰発現マウスはいずれも骨形成の亢進による骨量の増加を示す(図1).一方,FRA1あるいはJUNB欠損マウスは骨形成の低下を示す.しかしながら,AP1ファミリー転写因子による骨芽細胞分化調節の分子機構は未だに不明な点が多い.5 PPARγ老化に伴い,骨髄中の間葉系幹細胞の分化が骨芽細胞から脂肪細胞へとシフトし,骨髄中の脂肪が増加する.PPARγは脂肪細胞分化のマスター遺伝子であり,PPARγの過剰発現では骨芽細胞分化が抑制され脂肪細胞分化が促進される9).一方,PPARγヘテロ欠損マウスでは,骨髄内の骨芽細胞数の増加,脂肪細胞数の減少が認められ,骨形成亢進に伴い骨量が増加することが報告されており10),生体でのPPARγ発現量が脂肪細胞と骨芽細胞の分化に重要であると考えられる.転写因子Mafは,Runx2と協調的に骨芽細胞分化を促進するが,Maf 遺伝子欠損マウスでは,骨芽細胞分化の抑制と同時に,PPARγの発現が増加するため,脂肪細胞への分化が亢進している11).Mafの発現は加齢に伴い骨髄間葉系幹細胞で低下することから,加齢に伴い骨髄において骨芽細胞分化が低下し,脂肪細胞分化が亢進する一因がMafの発現の変動である可能性も考えられている.Ⅲ 液性因子による骨芽細胞分化調節1 BMPBMPはTGF -βスーパーファミリーに属し,さまざまな生理作用を発揮する.なかでも,BMP2や4は強い骨形成作用を示す.BMP2, 4は骨芽細胞に存在するBMPⅠ型受容体に結合し,Ⅱ型受容体とヘテロダイマーを形成する.すると,転写因子Smad1, 5あるいは8がリン酸化され,Smad 4との結合による複合体形成が促進される.こうして形成されたSmad複合体は核内に移行し,Runx 2と協調的に骨芽細胞で発現する種々の遺伝子の転写を促進する(図1).さらにBMP 2はOsterixの発現を誘導し,複合的に骨芽細胞分化を促進する2).間葉系幹細胞特異的にBMP 2を欠損したマウスでは骨折治癒が遷延することからも,骨芽細胞分化におけるBMPの重要性が裏付けられる.2 WntWntは発生やガン化に重要なタンパクであり,Wnt3aをはじめとする古典的WntとWnt5aなどの非古典的Wntに分類される.骨において,古典的WntはWnt受容体のFrizzledおよびWnt共受容体であるLRP5に結合し,glycogen synthase kinase- 3 beta(GSK- 3β)を抑制し,ユビキチン化/プロテオソーム経路による転写因子β- カテニンの分解を阻害する(図2)12).その結果,活性化されたβカテニンは核へと移行し,間葉系細胞から骨芽細胞への分化を促進する(図2).ヒトではLRP5 遺伝子の不活性型,活性型の遺伝子変異により,それぞれ骨粗鬆症,偽神経膠腫症候群(OPPG)あるいは骨量増多症を発症し,LRP5欠損マウスでは骨形成や骨量が減少する.また,古典的Wnt 系路のアンタゴニストとしてDkkやsFRPが同定され骨代謝における作用が明らかとなるなど,古典的Wnt-LRP5の骨形成における重要性が注目されている.骨細胞が分泌するsclerostinは