カレントテラピー 32-10 サンプル page 10/32
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カレントテラピー 32-10 サンプル
Current Therapy 2014 Vol.32 No.10 551003テロ変異により,頭蓋と鎖骨の異常を示す頭蓋鎖骨異形成症を発症することからも,Runx 2は骨芽細胞の分化に必須の転写因子と考えられている.さらに,Runx2は成熟骨芽細胞の機能や軟骨細胞の肥大化にも重要な役割も果たす2).Smad, MAF, TAZ, MSX2, RB, Gli2などのさまざまな転写因子は,Runx 2の機能を活性化したり,Runx2自身の発現を誘導することで骨形成を促進する.一方,Twistは主に間葉系細胞で発現するbHLH型の転写因子で,冠状縫合早期癒合,顔面の奇形を呈するSaethre-Chotzen症候群の原因遺伝子であるが,Runx 2に直接結合し,その転写活性を抑制することで骨芽細胞分化を抑制する3).また,アダプタータンパク質であるSchnurri - 3はE 3ユビキチンリガーゼWWP1と協調して,Runx 2をユビキチン化し,分解することで,骨芽細胞分化を抑制する4).さらに,STAT1, ZPF 521, Notchシグナルに関わるHESやHEYといった転写因子もRunx 2の作用を抑制する.このように,数多くの転写因子がRunx 2と協調的に骨芽細胞分化の調節に関わる.2 ATF4Basic leusin-zipper(bZIP)型の転写因子であるATF4は,オステオカルシン遺伝子のプロモーター領域に結合し,Runx2とともにオステオカルシンの転写を調節することで,骨芽細胞の分化と機能を促進する5).また,ATF4は骨芽細胞においてCREBに結合し,receptor activator of NF-κB ligand(RANKL)の転写を促進することで破骨細胞分化も促進する.実際に,ATF 4欠損マウスは骨形成,骨吸収が低下した低回転型の骨粗鬆症と成長障害を示す.ATF 4はセリン/スレオニンキナーゼであるRSK2によりリン酸化を受け活性化される.RSK 2は,骨量の減少と,精神遅滞を示すCoffin -Lowry症候群の原因遺伝子として知られているが,興味深いことに,RSK2欠損マウスおよびATF 4欠損マウスでは,Runx2やOsterixの発現量は野生型と同等であるにもかかわらず,骨形成の低下による骨量減少を示す5).そのため,ATF4はこれらの転写因子より後の段階で骨芽細胞分化に関わるものと考えられる(図1).一方,ATF 4は細胞内へのアミノ酸の取り込みの促進にも関与している.RSK 2 欠損マウスおよびATF4欠損マウスから採取し培養した骨芽細胞では,Ⅰ型コラーゲン遺伝子のmRNAの発現量には変化が認められないにも関わらず,Ⅰ型コラーゲンのタンパク合成量は有意に低下している.その培養液中にアミノ酸を添加することによりタンパク合成は改善することから,ATF4は骨芽細胞内へのアミノ酸の取り込みを促進することでも,骨芽細胞の機能を調節していると考えられる(図1)5).また,核マトリックスの一部を形成する転写因子SATB2は,Hox 遺伝子の転写を抑制するとともに,Runx2およびATF 4と直接結合し,それらの活性を増強することで骨格の発生や骨芽細胞分化を調節する6).このようにATF4はRunx2とともに骨形成に重要な役割を担っている.Runx2 ATF4SATB2TwistShn-3STAT1HESHEYRSK2間葉系幹細胞Smad,NAF,TAZMSX2RBGli2OSXNFATc1p53骨芽細胞FRA1ΔFOSBJUNBアミノ酸取り込みタイプI コラーゲン合成・分泌BMP2図1転写因子による骨芽細胞分化調節機構骨芽細胞分化はRunx2を中心とした転写因子によって調節される.また,転写因子のタンパク発現量も,骨芽細胞の分化や増殖に重要なカギを握っているものと考えられる.