カレントテラピー 32-1 サンプル page 20/34
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カレントテラピー 32-1 サンプル
64 Current Therapy 2014 Vol.32 No.164フルエンザウイルスは,オートファジーの成熟(ライソゾームとの融合のこと)を阻害することが明らかとなっているが,麻黄湯はそれを解除し,本来のオートファジーの作用を増強することがわかってきた.オートファジー機能の強化という視点で麻黄湯を考えると,他の急性熱性疾患をきたすウイルス感染症にも有効である,ということの説明になるかもしれない.その他,in vitroにおいて抗ウイルス活性を有する植物由来物質,特にフラボノイドに関しては報告が多い8).漢方薬は,特定の化学物質ではなく,多くの化学物質の効果の総和である.したがって,単独の作用機序だけでは説明できない可能性が高いが,逆にこのことは,薬剤耐性の出現に対して有効であるといえるのかもしれない.Ⅳ 麻黄湯の適応と使用方法日本感染症学会提言の「抗インフルエンザ薬の使用適応について(改訂版)」は,現在使用できるNA阻害薬の使用方法について詳しく解説している.この提言に漢方薬は含まれていないため,実際の所は処方しづらいかもしれない.では,一般臨床医が漢方薬を考慮するのはどのような場合であろうか.10歳代の小児で,オセルタミビルが使用しにくい場合(異常行動との関連)や,インフルエンザ迅速診断で陰性となった場合,あるいは患者が漢方を望む場合などは麻黄湯を考えてもよいだろう(表1).また,NA阻害薬に比し,早期の症状改善にも漢方薬は有効であるかもしれない2).麻黄湯は単独投与で十分有効であるが,心配な場合はNA阻害薬との併用を行っても支障はない.ただし,併用したから効果が著明に増強する,ということはないようである1).NA阻害薬と同様,発症後48時間以内の治療開始が望ましい.麻黄湯は投与初日が最も大切である.麻黄湯の初回服用は午後や夕方になることが多いが,初日のみ3, 4時間おきに3回服用するよう指導する(食事とは無関係でよい).2日目からは朝・昼・夕の食事時(食前または食後)でよい.投与期間は抗ウイルス作用を考え,タミフルR同様5日間が望ましい.また,高熱でつらいときはアセトアミノフェンの屯用を行ってもかまわない.インフルエンザ患者が麻黄湯を服用すると,服用するごとに体が温まり,汗をかき,体が楽になってくるので,そのことを患者に伝えておくほうがよい.特に初回投与のみ2包みを1度に服用すると,NA阻害薬よりも筋肉痛,倦怠感,頭痛や寒気を取る作用が強いことがわかっているので,症状が強い場合は考慮するとよい2).ただし,虚弱高齢者や慢性心不全,甲状腺機能亢進症,妊婦の場合はエフェドリンの副作用を考え,麻黄湯は避けたほうがよいであろう.また,麻黄湯の医療用エキス製剤は株式会社ツムラ・クラシエホールディングス株式会社・小太郎漢方製薬株式会社などのメーカーが製造しているが,エキスの含有量(添加剤を含めた重量ではない)はどれもほぼ同等であり,品質管理も厳密であるため,有効性に大差はないと考えられる.一方,OTC薬に関してはエキス含有量が少麻黄湯の適応1)健康成人のインフルエンザ2)患者が漢方治療を望む場合3)患者がより安価な薬価を望む場合4)10歳代でタミフルRが使用しにくい5)インフルエンザ抗原迅速診断が陰性(初期は偽陰性になることがある)6)倦怠感,頭痛,筋肉痛などの全身症状が強い場合麻黄湯の禁忌1)虚弱高齢者(安全性が確立していないため)2)漢方薬を服用できない乳児3)慢性呼吸器疾患・心疾患,妊婦(安全性が確立していないため)4)前立腺肥大症,緑内障(エフェドリンの副作用を考慮して)5)重症合併症を伴うインフルエンザ(重症肺炎,脳症など)表1インフルエンザにおける麻黄湯の適応と禁忌(私見)日本東洋医学会ホームページ「インフルエンザの漢方治療について」も参照されたい(http://www.jsom.or.jp/universally/index.html).