カレントテラピー 32-1 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.1 6161Ⅰ はじめに20世紀末にノイラミニダーゼ(neuraminidase:NA)阻害薬が開発され,インフルエンザの治療成績は飛躍的に向上した.2009年のパンデミックの際も,NA阻害薬を病初期から積極的に使用した日本は,インフルエンザによる死亡率が全世界的にみて顕著に低かった.NA阻害薬は安全面においても信頼性が高いといえるが,異常行動との関連,高価格,将来の耐性株出現,発展途上国への普及,といった面で懸念がないわけではない.一方,漢方薬が広く受け入れられている日本では,最近になり麻マ黄オウ湯トウのインフルエンザに対する有効性がマスコミやインターネットにしばしば取り上げられるようになった.一般臨床医としては,はたして本当に漢方薬がインフルエンザに効果があるのか,NA阻害薬と比較して有効性はどうなのか,抗ウイルス作用があるのか,など気になるところである.この稿では麻黄湯を中心に,漢方薬のインフルエンザに対する有効性とその作用機序,使用方法について述べる.Ⅱ インフルエンザと漢方漢方医家にとっては,麻黄湯や大ダイ青セイ龍リュウ湯トウがインフルエンザに有効であることは周知の事実であるが,大多数の一般医家にとっては,作用機序や臨床成績がよくわかっていないため,使用することがためらわれているのが現状といえよう.西洋医学の場合,疾患によって使用する薬は決まってくるが,漢方の場合は多くの処方(方剤)のなかから,症状・病勢・インフルエンザにおける漢方療法鍋島茂樹*漢方薬のいくつかは,古来よりインフルエンザや麻疹といった急性熱性疾患に効果のあることはよく知られていた.ただし,現代医学的な証明が少なく,一般臨床医が漢方薬を治療薬として使用することはほとんどなかったといえよう.しかし最近になり,いくつかの漢方薬がランダム化比較試験など信頼性の高い臨床試験において,ノイラミニダーゼ(neuraminidase:NA)阻害薬に劣らぬ効果があることがわかってきた.特に麻マ 黄オウ湯トウは,解熱までの時間,ウイルス残存率,血中炎症性サイトカイン濃度において,オセルタミビル群・ザナミビル群と同等であることがわかってきた.また,漢方薬の抗インフルエンザ効果の機序も次第に解明されつつある.そのひとつとして,細胞のオートファジー機能の強化が考えられる.麻黄湯医療用エキス顆粒はインフルエンザに適応を有し,最も処方しやすい漢方薬である.今後,麻黄湯などの漢方薬が抗インフルエンザ薬のひとつに加わる可能性が出てきたといえよう.* 福岡大学病院総合診療部診療部長インフルエンザ診断と治療の最前線―抗インフルエンザ薬の時代を迎えて