カレントテラピー 31-9 サンプル

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Current Therapy 2013 Vol.31 No.9 11糖尿病―進む診断・治療技術897基準に基づいた糖尿病の臨床診断のフローチャートを示す(図3)3), 5).国際的にも,米国糖尿病学会,欧州糖尿病学会,国際糖尿病連合の委員で構成された国際専門委員会は2009年6月に,糖尿病の診断にはNGSP値で表記されたHbA1cを用いることを推奨しており,糖尿病網膜症の頻度が高くなることを根拠にHbA1c(NGSP)≧6.5%で糖尿病と診断することを提唱した.また,2010年1月には米国糖尿病学会は,HbA1c(NGSP)≧6.5%を3つの血糖指標と並列に置く新たな糖尿病の診断基準を公表した.血糖値の検査に加えてHbA1cを糖尿病の診断に活用することは,世界的な流れとなっており,その基準値はNGSP値で表記されたHbA1c(NGSP)6.5%〔JDS値で表記されたHbA1c(JDS)6.1%〕となり,わが国を含めて国際的に一致している点に留意されたい.Ⅲ HbA1cの国際標準化糖尿病の診断基準改訂と併せて,わが国におけるHbA1cの国際標準化に関する取り組みも開始された.HbA1cは慢性の高血糖状態を反映する検査であり,治療上の指標として世界的に汎用されている.また,わが国においては,治療のみならず糖尿病実態調査や国民健康・栄養調査などの疫学調査,さらには特定健診においても広く活用されてきた.しかしながら,これまで使用されてきたJDS値で表記されたHbA1c(JDS)は,世界に先駆けて精度管理や国内での標準化が進んでいるものの,わが国以外のほとんどの国で使用されているNGSP値で表記されたHbA1c(NGSP)と比較して約0.4%低値であるという「ずれ」が存在することが明らかとなった.糖尿病の診断でHbA1cが国際的に用いられるようになり,その基準値がわが国では6.1%(JDS値)で,国際的には6.5%(NGSP値)という,数値の「ずれ」を放置し続けることは,「日本だけが厳しい診断基準を採用している」といった誤解をまねきかねず,将来にわたってより大きな混乱をきたすことが懸念された.また,糖尿病の知識の啓発・診断・治療法に関する国際共同キャンペーンや国際共同研究を推進するためにも,可及的速やかなHbA1cの国際標準化が必要であると考えられた.そこでまず,学術的な場面(英文誌の原著論文や国際学会の発表等)においては,JDS値で表記されたHbA1cに一律に0.4%を加えた,NGSP値に相当する「国際標準値」を2010年7月1日より暫定的に用いることとした.一方,日常臨床や特定健診などでは,当面の間JDS値を使用し続けることとした.その後2011年10月に,JDS値とNGSP値の換算式として「NGSP値(%)=1.02×JDS値(%)+0.25%」が関係団体間で正式に認証され,JDS値とNGSP値の対応が確定した(表1)6).これによって,JDS値に補正値を加えた数値を,「国際標準値」ではなく正式なNGSP値として呼称してよいことになった.また,糖尿病の診断基準に関しては,2010年の改訂以降のわが国におけるHbA1c国際標準化の進捗を踏まえて,同報告のHbA1cの表記を改めるとともに国際標準化の経緯について解説を加えたバージョンを,2012年に発表した5).そして2012年4月より,日常臨床においてNGSP値で表記されたHbA1cの使用が開始された.留意すべきは,NGSP値はJDS値に一律に0.4%を加えるのではない点であるが,特定健診や臨床的に重要なHbA1cの範囲は表1に示す(b)であることがほとんどであり,結果として「+0.4%シフトすること」がポイントとなる.日常臨床において,2013年4月1日からはNGSP値単独表記・使用が推進されており,2014年4月1日以降は,わが国において使用されるHbA1cの表記はすべてNGSP値のみとなる予定であ(a)JDS値で 4.9%以下 :NGSP値(%)=JDS値(%)+0.3%(b)JDS値で 5.0 ~ 9.9% :NGSP値(%)=JDS値(%)+0.4%(c)JDS値で10.0 ~ 14.9% :NGSP値(%)=JDS値(%)+0.5%表1HbA1cの国際標準化:JDS値とNGSP値の対応〔参考文献6)より引用改変〕