カレントテラピー 31-9 サンプル

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92 Current Therapy 2013 Vol.31 No.99781型糖尿病と膵島移植-現状と展望-独立行政法人国立国際医療研究センター研究所膵島移植プロジェクト研究長 霜田雅之1 はじめに膵島移植は,インスリン治療によっても血糖コントロールが不良で,生活の質(QOL)の低下や重症低血糖発作などをきたす1型糖尿病,あるいは難治性糖尿病に対して行われている治療である.β細胞補充療法として位置づけられており,膵臓をばらばらにして膵島のみを患者の門脈に注入するという低侵襲でリスクの小さい次世代の移植療法である.2000年にカナダのアルバータ大学から7名の1型糖尿病患者に対しステロイドを用いず,複数回の膵島移植をすることによって全員のインスリン離脱を達成したことが報告され,世界的に行われるようになった.その後プロトコールが改良され,現在は最先端の施設では1回の移植でのインスリン離脱達成および5年後インスリン離脱率50%以上の成績が報告されている.カナダなどでは膵島移植は標準治療となっており,米国でも国立衛生研究所(National Institute of Health:NIH)主導のもと第Ⅲ相臨床試験が終了し,標準治療に向けて準備中である.Collaborative IsletTransplant Registry(CITR)の報告によれば,1999年から2009年までに北米,欧州および豪州において481名の患者に計897回の膵島移植が実施されている.2 わが国の膵島移植日本での膵島移植は,主に心停止ドナーからの提供により行われてきた.2004年に京都大学において心停止ドナーから第1例目が実施され,追加移植後に患者はインスリンから離脱した.その後,2007年に膵島分離に使用される消化酵素の問題で中止されるまでに,18名の患者に対して計34回の膵島移植が実施された.多くの例では移植膵島が機能し,複数回移植を受けた3名でインスリン離脱を達成した.しかし移植1年後には3例ともインスリン注射を再開しており,長期成績が課題であった.2012年より日本でも臨床膵島移植が再開され,新しいプロトコールで先進医療として第Ⅱ相臨床試験が行われ,標準治療化を目指している.また日本でも2013年4月からは脳死ドナーからの膵臓提供が可能となり,成績の向上が期待されている.一方,2005年には京都大学で世界初の成功例となる生体ドナー膵島移植が実施されたが,適応が限られるため2例目は実施されていない.3 膵島移植の展望膵島移植は近年格段に進歩し,膵臓単独移植の成績にほぼ匹敵するようになっている.課題として,長期成績の向上,膵島分離成功率の向上,免疫抑制剤の副作用軽減などがあるが,近い将来さらに研究が進んで標準治療となり糖尿病治療の重要な位置を占めると考えられる.また,膵島移植の技術は再生医療,異種移植,免疫寛容の研究に応用可能と考えられており,これらの研究分野への貢献が期待される.