カレントテラピー 31-9 サンプル

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Current Therapy 2013 Vol.31 No.9 89漢方薬療法975常が見出されない場合には,漢方医学では「未病」としてとらえ,しっかり対処することが可能である.漢方医学では,病態を「陰・陽」や「虚・実」,「気・血・水」の概念から判断し,証を決定する.固太りタイプは,主に食事摂取過多に起因し,水太りタイプは主に消化吸収された栄養素や体に蓄積した水分がうまく排出されないと考える.固太りタイプに最もよく使われるのが防風通聖散で,このほか大ダイ柴サイ胡コ湯トウを投与することがある.防風通聖散は脂肪組織を減少させることが基礎的,臨床的研究から明らかになっており,現在,注目されている漢方薬のひとつである.水太りタイプには利水剤の防ボウ已イ黄オウ耆ギ湯トウが第一選択となる.そのほか五苓散を用いることもある.ただし,いずれも下剤成分が含まれる大ダイ黄オウが構成生薬となっているため,下痢しやすい症例には不向きである.さらにストレスによる過食が原因の場合は,気の異常があるととらえ,これを整える漢方薬が用いられる.代表的なものに大柴胡湯や柴サイ胡コ加カ竜リュウ骨コツ牡ボ蛎レイ湯トウ,大ダイ承ジョウ気キ湯トウ,桃トウ核カク承ジョウ気キ湯トウなどがある.ここでは,肥満症に対する漢方薬として,防風通聖散,防已黄耆湯の投与成績を紹介する.1 防風通聖散秋山らは,肥満度20%以上または体脂肪率30%以上の肥満患者( 平均年齢55±3.5歳,BMI 31.6±0.5kg/m2)を対象とし,β3 -adrenergic receptor(β3 -AR)遺伝子変異あり(M群)となし(W群)に分け,生活指導(A)と生活指導に加え防風通聖散7.5g/日投与(B)を12週間行った.両群間ともAおよびBの治療により有意な体重減少をきたしたが,M群の体重減少は少なかった.HOMA -Rは,各群とも治療により低下し,特に体重減少が少なかったMB群において著しく減少した.内臓脂肪の指標としたwaist/hip比も体重減少が少ないにもかかわらずMB群において大きく減少した.防風通聖散は,β3 -AR遺伝子変異を伴った治療抵抗性の肥満患者に対して体重減少は軽度であったが,内臓脂肪を減少させることにより,インスリン抵抗性を改善したと報告した11).筆者らの研究室のKobayashiらも自然発症2型モデルラットであるOtsuka Long-Evans TokushimaFatty(OLETF)ラットに防風通聖散を投与し,正常血糖クランプ法を用いてインスリン抵抗性改善効果があることを証明している12).p=0.04502468101214160246810121416GIR(mg/kg/分)投与前投与後Low-dose clamp High-dose clamp投与前投与後図4牛車腎気丸投与前後におけるグルコース注入量(GIR)〔参考文献10)より引用改変〕