カレントテラピー 31-9 サンプル page 21/30
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カレントテラピー 31-9 サンプル
Current Therapy 2013 Vol.31 No.9 87漢方薬療法973用を有している.さらに,牛車腎気丸の構成生薬である修シュウ治チ附ブ子シの有用性には,脊髄よりの内因性オピオイド物質であるダイノルフィンと一酸化窒素(NO)の両者が関与していることが報告されている.以下,糖尿病神経障害に対し,牛車腎気丸が有効である報告を紹介する.佐藤らは,糖尿病神経障害患者80症例に対し,牛車腎気丸7.5g/日を12週間以上投与し,しびれに対する自覚症状の改善度は66.2%であったという成績を報告した.1995年4月現在の554症例の全国集計成績でも,しびれに対する有効率は67.3%と当初の報告と同一傾向の有効率であった5).さらに,坂本らは,糖尿病神経障害を有する86例に対し,牛車腎気丸7.5g/日を試験薬(G群,48例),メコバラミン1.5mg/日を対照薬(M群,38例)とし,試験薬と対照薬は封筒法により2群間に分け,投与期間は12週間以上,自覚症状,他覚所見および臨床検査成績を投与前後で比較した.その結果しびれに対する自覚症状改善度がG群69.8%,M群37.1%と牛車腎気丸投与群の改善率が有意に(p<0.05)大であったという結果を得ている(図1)6).またTawataらは,糖尿病性神経障害を有する2型糖尿病患者17例を対象とし,牛車腎気丸7.5g/日を12週間投与し,その後8週間休薬した.自覚症状の変化,およびSMV-5型振動覚計を用いて振動閾値を計測し比較検討した.牛車腎気丸はしびれ(p<0.001),冷感(p<0.05)を有意に改善し,また振動覚閾値を有意に改善し,休薬期において有意に上昇した(p<0.05)と述べている7).谷内らは,糖尿病神経障害を有する患者と,潜在的な神経障害と思われる患者6例を含む35例に牛車腎気丸7.5g/日を12カ月投与し,自覚症状と改善度を評価した.糖尿病神経障害に対して80%の症例で何らかの自覚症状の改善を認め,特に自律神経症状,しびれを中心とした改善度が大であったと報告した8).筆者らは,牛車腎気丸が糖尿病患者のインスリン抵抗性を改善させる事実を,動物実験的にも臨床的にも見出しているが,ここでその成績の概要を紹介する.Huらは,Wistar系雄性ラットを糖尿病ラット〔ストレプトゾトシン(STZ)50mg/kg静注〕と健常ラットの2群に分け,2段階(low-dose clamp:3.0mU/m2/分,high-dose clamp:30.0mU/m2/分)正常血糖クランプ法を実施した.牛車腎気丸800mg/kg経口投与ラットでは,STZ糖尿病ラットで低下したインスリン感受性(metabolic clearance rate of glucose:MCR)が有意に改善したが,NO合成阻害薬L-NMMA併用によりこの効果は消失した(図2).すなわち牛車腎気丸は糖尿病ラットのインスリン抵抗性を改善させるが,その発現にはNOが関与しているという事実を見出した9).Unoらは,2型糖尿病患者71例に牛車腎気丸M群(メコバラミン) G群(牛車腎気丸)25 25 50 75しびれ**冷感下肢痛便秘発汗ほてり感75 50腰部および下肢の脱力感目のかすみ性欲減退*および陰萎*p<0.10,** p<0.05図1牛車腎気丸とメコバラミンによる自覚症状改善度比較試験数値はやや改善以上の%を示す.〔参考文献6)から引用改変〕