カレントテラピー 31-9 サンプル

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Current Therapy 2013 Vol.31 No.9 85971Ⅰ はじめに日本人の四大死因は,がん,心臓病,肺炎,脳血管障害である.これらの背景として,運動不足,高タンパク・高脂肪食の欧米化された食事による生活習慣病の増加が関係している.2007年の「国民健康・栄養調査結果の概要」によると,糖尿病患者とその予備軍は約2,210万人に達し,2002年の糖尿病実態調査に比べ590万人増加した.糖尿病は合併症が深刻な疾患であるが,網膜症による視力障害が年間約3,000人,腎症による人工透析導入が約16,000人以上に達している.神経障害によって下肢のこむら返り,しびれ,違和感,疼痛を訴える患者も多く日常生活のQOLを著しく低下させている.したがって,糖尿病合併症への対策は,糖尿病の臨床上最も重要なポイントのひとつである.明治以降,日本では日常臨床で行われているのは西洋医学である.医学教育,保険診療,科学的根拠に基づいた医療(evidence based medicine:EBM)を基にした医療評価も西洋医学が基盤となっている.これに対し,東洋医学は「証」を基に,随証治療が行われる「個別医学」である.臓器別でなく,患者全体をみて総合的に治療を行っていく全人的治療である.数千年の歴史と伝統をもち,実証経験を繰り返された漢方薬は,よほど適応を誤らなければ比較的安全に投与できる利点がある.よって,今日西洋医学に限界がある結果,生活習慣病の予防効果をうたった漢方薬の需要が増加してきているのは当然である.1976年健康保険に薬価収載されて以来,今日では8割以上,産婦人科など分糖尿病の漢方治療―最新のエビデンス―宇野智子*1・北村伊都子*2・佐藤造*3糖尿病では,日常の診療に漢方薬治療を処方する場合,糖尿病の診断,分類,合併症の進展度,食事・運動療法,治療方法の選択は西洋医学的手段で行い,合併症を中心とした治療上の問題点にのみ漢方薬を併用する.最近では,糖尿病領域においても漢方医学が有用な領域があることも認知されてきており,科学的根拠に基づいた医療(evidence based medicine:EBM)に基づいた実証的な研究データも広範囲に蓄積されつつある.そのなかでも牛ゴ 車シャ腎ジン気キ 丸ガンは糖尿病神経障害の自覚症状を改善させ,さらに2型糖尿病患者のインスリン抵抗性を改善させることを明らかにした.さらに,防ボウ風フウ通ツウ聖ショウ散サンは,内臓脂肪を減少することによりインスリン抵抗性を改善させることも明らかにした.今後日本の医療は,西洋医学の臨床と基礎研究を基に,漢方薬の西洋医学的評価を推し進めて東西医学の融合が図られていくと考えられる.そして新しい医療の道を開くことができると期待する.今後のさらなる大規模な研究の推進を待ちたい.*1 愛知学院大学心身科学部健康栄養学科准教授*2 愛知学院大学教養部講師*3 愛知学院大学心身科学部健康科学科客員教授糖尿病―深化する疾患コンセプト