カレントテラピー 31-9 サンプル

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Current Therapy 2013 Vol.31 No.9 35921association study:以下GWAS)」とよばれる解析法の普及により,急速に進歩した.ここでは詳細は省くが,遺伝子の機能に関係なく,主にSNPをマーカーとしてゲノム全体を網羅的に解析する方法である.2型糖尿病は,さまざまな疾患の先陣を切ってGWASの成果が報告され,新たな遺伝因子が一気に複数同定された(表).ここでは最も代表的な遺伝因子を3つ取り上げる.1 TCF7L2TCF7L2 は現在,アジア人も含めほとんどの民族で最も再現性の高い糖尿病感受性遺伝子である.特にイントロン3のSNP(SNPのIDはrs7903146およびrs12255372)のリスクアリルが,インスリン分泌低下を介して糖尿病リスクを高める1).TCF7L2タンパクは「転写因子」であり,膵β細胞の分化・増殖・アポトーシス・インスリン分泌,あるいはGLP-1による細胞増殖・保護作用などを制御する.また,小腸内分泌細胞L細胞においてGLP -1の発現を調節するとも考えられている.最近ヒト膵島において,このリスクSNPを含むゲノム領域のクロマチン構造の状態がSNPにより変化し2),遺伝子発現に影響する可能性が示された.ただし,ヒトにおけるTCF7L2のリスクアリルからインスリン分泌不全へ至るメカニズムは,今後の詳細な検討が待たれる.2 KCNQ1初期のGWASの報告はすべて白人を対象としていたが,東アジア人から初めてGWASによって得られた2型糖尿病遺伝因子がKCNQ1 である3), 4).2型糖尿病と相関するSNPは,KCNQ1 遺伝子のイントロン15領域に存在し,インスリン分泌障害を介して疾患リスクを上げている3)が,興味深いことに東アジア人だけでなく白人でも糖尿病と強い相関を認め,最近のメタ解析5)でも人種を超えた遺伝因子であることが示された.日本人2型糖尿病において,現時点で最も重要な遺伝子と思われるが,後述するように世界的にみても,TCF7L2 と並んでヒト2型糖尿病の成因,および病態の最も重要な分子といえる.KCNQ1 は,細胞膜上に存在する電位依存性Kチャネルのサブユニットをコードする.このチャネルの遺伝子変異は,「QT延長症候群」の原因となることがすでに知られていた.糖尿病のなりやすさを担うSNPは,KCNQ1 のイントロンに存在しており,もしこのSNPにより膵β細胞や腸管におけるチャネルの発現が変化すれば,インスリンやインクレチンの分泌が変化する可能性がある.一方,このSNPを含む領域が,KCNQ1 以外のゲノム上近傍の遺伝子の発現調節に関与したり,SNP近傍に未知の転写産物が存在したりする可能性もある.またアイスランド人において,KCNQ1 領域の別のSNPが糖尿病と相関し,由来する親により疾患感受性が変わる,と報告されている6).興味深いことに,この領域はDNAメチル化を介して片方の親由来の遺伝子のみ発現される「インプリンティング」とよばれる制御を受けている.KCNQ1 のイントロンのSNPが,なぜインスリン分泌低下を生じるのかも,今後の研究課題である(図1).3 CDKAL1CDKAL1 遺伝子のイントロンSNPも,人種を超えて2型糖尿病と強い相関を示す.CDKAL1タンパクの機能は不明であったが,最近,特定のトランス遺伝子染色体機能備考TCF7L2 10 転写因子.膵島やGLP-1産生細胞最も再現性の高い遺伝因子HHEX 10 転写因子.膵や腸管上皮膵の初期発生に関与かCDKAL1 6 トランスファーRNAの修飾膵β細胞機能(タンパク,特にインスリン合成)CDKN2A/B 9 細胞周期関連膵β細胞の増殖・維持に関連かIGF2BP2 3 IGF2mRNA結合タンパクインスリン作用に関連かSLC30A8 8 膵島特異的亜鉛トランスポーターアミノ酸置換(Arg325Trp)を生じるSNPFTO 16 核酸脱メチル化酵素肥満を伴う糖尿病.エピジェネティックな制御に関与GCKR 2 グルコキナーゼ制御タンパクグルコキナーゼ活性の制御表 「GWAS初期」に確立した主な2型糖尿病遺伝因子日本人を含む多くの民族で糖尿病との関連性が確認されている.