カレントテラピー 31-8 サンプル

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10 Current Therapy 2013 Vol.31 No.8778何を評価項目としているのか,コントロールはどのくらいのX線線量を使用しているのかに注意して,慎重に結果を解釈する必要がある3)~5).例えば,もともと周囲組織に比べてコントラストの高い尿路結石の検出能だけを対象とするのであれば,多少の軟部組織間コントラストの低下を伴っても大幅なX線線量の低減が可能である.しかしながら,軟部組織間のコントラストも担保するのであれば,抑制的な線量低減のほうが現実的である.また,コントロールで多めの線量を使用していた場合には,おのずとIRでの線量低減率は高くなる.IRにおける応用のもう一つの方向性は,X線線量を増やすことなしに従来法に比べ画像ノイズの低減を図るものである.この特性は,特にCT angiographyの画質を向上させるのに適している.CT angiographyは0.5~1mm厚程度の薄層スライスが必要であることが多く,画素容積の細密化に伴うノイズの増加が避けられない.このノイズの増加をIRがうまく吸収し,高品質のCT angiographyを得ることができる.特に末梢動脈の描出能の向上や,血管径の計測値における正確性の向上が報告されている6)~9).IRの現時点での課題のひとつは,画像再構成に必要な計算時間の延長である.これは,コンピュータの性能の向上による解決が期待される.もう一つの課題は,blotchy appearanceなどとよばれる,IRに特有の画像処理ソフトでぼかしフィルターを通したような,ぬめりのある画質である.実際,このような画像に違和感を覚える医師は少なくない.われわれは,良くも悪くもFBPを用いたCT画像特有の「ざらつき」に慣れてしまっており,CT画像の画素値のばらつき(=画素値の標準偏差)が少ないことを必ずしも画質の向上とは認識しない事実を,改めて確認する結果となった.したがって,単純に画素値の計測により求められる画像工学的な指標だけでなく,人間の目視により画質を評価することは,今後も重要な位置を占めると考えられる.Ⅲ Dual energy CTDual energy CTとは,異なる二種類の管電圧をもつX線を照射して,各物質のX線減弱係数がX線のエネルギーによって異なるという物理的性質を利用し,新たな情報を得ようとするCT撮像法である10). 一般的に,80kVpなどの低管電圧撮像と140kVpなどの高管電圧撮像を比べた場合,低管電圧側では組織間コントラストが高く,造影剤による増強効果も強くなる傾向がある.また,低管電圧側では大きな電流を使用する必要があるものの,高管電圧撮像に比べX線被曝が少なくなることが多い11).この性質を応用して,例えば,X線被曝量を増やすことなく肝腫瘍と背景肝とのコントラストを向上させることができ12), 13),また,CT angiographyの描出能向上も図ることができる11), 14).Dual energy CTのもう一つの有用性は,各物質のX線減弱係数がX線のエネルギーによって異なるという物理的性質の差をうまく利用することで,物体の組成を推定できるmaterial decompositionとよばれる技術である.これにより,造影CTから仮想非造影画像を作成し,単純CTの代用とすることもできる11).あるいは嚢胞と紛らわしい腎腫瘍において,ヨード画像を作成することにより,増強効果の有無をより正確に判定することができる15).現在,dual energy CTには,二つのX線管球を角度を変えて配置し,二管球同時曝射を行うCT機種と,一つのX線管球を有して管電圧の高速切り替えを行う機種などがある.後者の場合,高低いずれの管電圧の場合でも同一の電流を使用しなければならない制約があり,高管電圧条件下でも電流量が大きくなることを知っておく必要がある.また,CTで用いられるX線は幅をもったエネルギーを有するが,dual energy CTでは,2種類の管電圧で撮像した画像データから仮想単色X線等価画像をシミュレートできるCT機種があり16),40~140keVまでの任意のエネルギーの仮想単色X線を選んで画像を再構成することができる.骨などによるビームハードニングアーチファクトは,X線のエネルギーが幅をもつた