カレントテラピー 31-8 サンプル

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カレントテラピー 31-8 サンプル

Current Therapy 2013 Vol.31 No.8 9777Ⅱ 逐次近似再構成法CTにおいて,撮像対象のX線透過データを実際の横断面像に再構成する計算法の現在の主流は,FBPである.FBPでは,管球の焦点サイズや検出器のサイズを無視し,さらに検出器に入射するX線の統計的なばらつきがないことを仮定している.そのため計算量が少なく,初期のCTではFBPを採用する合理的な理由があった.ただし,前述のような理想的な仮定とはほど遠い条件,例えば十分量のX線が使用されない場合には,測定値のばらつきや誤差が画像のノイズに反映され,実用に耐えない画像しか得られない短所がある.これに対してIRは,FBPで採用している理想的な仮定を,より現実に近い条件で考慮する.種々のアルゴリズムにより,計算された画像で推定される検出器のX線検出量と,実際の検出量とを比較して,近似させるプロセスを繰り返し,最終的に正解の画像に到達する方法である.IRは古典的な手法ではあるが,CT画像再構成時の計算コストが膨大で,ごく初期のCTを除いて,近年まで導入は非現実的であった.現在,CT装置メーカー各社は逐次近似法あるいはそれに類似する名称を用いた画像再構成を提供しているが,画質と計算コストのバランスをどのあたりに置くかメーカーにより幅がある.例えば,時間はかかるが理想を追求してX線検出データをはじめからIRに供するものや,より短時間で済むようにあらかじめFBPで計算した予備の画像に逐次的なノイズ低減技術を施すものなど,各メーカーの考え方により差異がある1).IRの最大のメリットは,FBPに比べ少ない量のX線でも,ノイズの少ない,実用に足る画像を得ることができるという点である(図).そのため従来法と比べた被曝の低減が,その臨床応用の大きな方向性のひとつである.Katsuraらは,胸部CTにおいて,より厳密なIRであるmodel -based iterative reconstruction(MBIR)を用いることにより,X線線量を80%近く減らしても,診断に使用可能な画像が得られたと報告している2).また,同様の画質を保ちつつ被曝低減を図った報告では,これまでのところ胸部CTを対象にしたものが最も多いが,頭部,腹部,CT冠動脈造影などにおいてもみられる.それらによれば,頭部CTでは約20%,腹部CTでは最大約80%,CT冠動脈造影では約50%の被曝低減が可能であると報告されている.ただし,これらの数値はa bc d図低線量CTでの画像再構成法によるCT画像の違い5mAsの低線量胸部CTのデータに,FBPとIRをそれぞれ使用して得られた画像を供覧する.縦隔条件表示では,FBPを使用したaに比べると,IRの一種であるmodel-based iterative reconstructionを使用したcでは,大血管や胸郭筋肉内に見られるノイズや骨からの線状アーチファクトの低減が顕著である.肺野条件表示においてもdではbで見られる肺実質のざらつき感がほとんどない.上段:FBP(a:縦隔条件,b:肺野条件)下段:model-based iterative reconstruction(c:縦隔条件,d:肺野条件)