カレントテラピー 31-8 サンプル

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8 Current Therapy 2013 Vol.31 No.8776Ⅰ はじめに1990年代末から急速に進んだ検出器多列化の流れが落ち着きつつある昨今,X線CTのキーワードは何であろうか.主たるモチベーションには,CT検査により生じる放射線被曝のさらなる低減と,画質や診断能のさらなる向上が挙げられる.そして,それに応じて,逐次近似再構成法(iterative reconstruction:IR)が再びCTにおいて応用されはじめ,また,体内元素のX線吸収に関する物理的性質の違いを検出可能とするdual energy CT(dual sourceCT)や,16cmの範囲を一度にカバーする面検出器CTが導入され,CT機種の一分野に定着している.IRを使用すると,標準的なCT画像再構成法であるフィルタ補正逆投影法(filtered back projection:FBP)に比べて少ないX線の量でもノイズの少ない画像を得ることができる.また,dual energyCTでは,異なる二種類の管電圧をもつX線を照射して,各物質のX線減弱係数がX線のエネルギーによって異なるという物理的特性を利用するものであり,組織間コントラストを調整することや,体内物質組成の推定を行うことが可能となった.面検出器CTでは,1心拍で心臓全体を撮像することが可能で,冠動脈CT血管造影での被曝の低減も可能とした.ただし,これらの新規技術は一方的なメリットを有するわけではなく,計算時間の延長やオフライン処理の必要性,特有の画質といった代償も生じてくる.本稿では,これら近年に導入されたCTの新技術とその特性,また現時点での課題について解説する.CT國松 聡*検査に伴う射線被曝のさらなる低減と,画質や診断能のさらなる向上が,近年のX線CTにおける発展の主なモチベーションである.これらの要請に応える形で,CTの領域では逐次近似再構成法(iterative reconstruction:IR),dual energy CT(dual source CT),面検出器CTが,この数年の間に導入されてきた.IRを用いると,画質を保ちつつX線線量を低減したり,あるいはX線線量を増やさずに画質を向上したりすることができる.また,dual energy CTでは,物質組成の違いを検出し画像に反映することができる.面検出器CTでは,1心拍で心臓のすべてをカバーし,さらに特定の臓器を連続的に撮像して機能的に評価することが容易となった.ただし,これらの新技術は,現時点では計算時間の延長やオフラインでの処理を要するなどの運用面での課題も抱えていることも知っておく必要がある.* 東京大学大学院医学系研究科生体物理医学専攻放射線医学講座准教授画像診断の進歩―最新技術とその臨床応用