カレントテラピー 31-8 サンプル

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94 Current Therapy 2013 Vol.31 No.8862Ⅲ 肝細胞癌への応用本邦でB,C型慢性肝炎に起因する古典的肝細胞癌の画像は,単純CTでは低~等吸収を呈し,造影dynamic CTの動脈優位相で造影されると高吸収を呈し,門脈相~平衡相では低吸収となることが多い.MRIのT1強調像で低~等信号,T2強調像でやや高信号,拡散強調像でも高信号を呈する.EOB造影MRIではdynamic MRI早期相で淡く不均一な高信号を呈し,後期相で低信号となり,肝細胞造影相では胆汁排泄能を有さないため低信号になる(図1).時に胆汁排泄能を有する肝細胞癌があり,その場合は肝細胞造影相で全体もしくは一部が高信号域になる.肝細胞癌検索時の問題点としては,肝機能障害による肝細胞造影相における肝臓の造影不良が挙げられる.肝臓への造影剤の取り込みが遅延し不良となるため,造影剤投与10分後ではなく20分後に撮像すると肝の造影効果がより良好となる.本邦における肝細胞癌の治療としては,切除,ラジオ波凝固療法(RFA),TACEが各々1/3施行されているが,切除後やRFA後,TACE後の治療効果や再発の有無の検索にもEOB造影MRIが使用される.特に,TACE後のリピオドール?の貯留は,CTではアーチファクトとなり,再発早期の時点でdynamic CTを施行しても発見が困難な場合がある.MRIでも,撮像時期によりリピオドール?の貯留が高信号になることもあるが,CTと比較するとdynamic MRIのほうが濃染部位が明瞭に描出される.図2に,TACE後の局所再発症例を示したが,CTと比較して,EOB造影MRIは動脈血流の描出に優れており,また肝細胞造影相で病変の範囲の描出に優れている.肝細胞癌の診断に加え,他の検査法にないEOB造影MRIの特徴は,dynamic MRIを含めた種々の撮像法で信号の変化がなく,肝細胞造影相でのみ低信号を呈する腫瘤や,dynamic MRIの早期相で濃染せず後期相で低信号を呈し,肝細胞造影相でも低信号となる乏血性の腫瘤が多く描出されることである.これらの腫瘤の多くは前癌病変である異型結節(dysplastic nodule)と考えられているが,経過観察により動脈血流が豊富となり(多血化),肝細胞癌として治療の対象となる.こういった腫瘤の多血化の危険因子として①径が10mm10),11),9mm12)もしae f g hb c d 図2肝細胞癌治療後再発C型慢性肝炎,肝細胞癌で2回肝切除術施行.その後の再発に対しRFAを施行し,その後の多発する肝細胞癌に対して計9回のTACEが施行された.さらに肝細胞癌の再発が疑われCTとEOB造影MRIが施行された.造影dynamic CT(a:単純,b:動脈優位相,c:門脈優位相,d:平衡相).EOB造影MRI(e:dynamicMRI早期相,f:肝細胞造影相,g:拡散強調像,h:脂肪抑制T2強調像).aでS4にリピオドール?の集積を認めるが,その背側部でリピオドール?の集積が乏しい部位を認める(矢印).同部位はbおよびcで不均一に早期濃染し,dで低吸収域になる.eでも同部位に境界明瞭な濃染域があり後期相やfでは低信号腫瘤として描出され明らかなviable lesionといえる.g,hでも高信号な領域として認める.CTと比較してアーチファクトの少ない明瞭な画像が得られている.