カレントテラピー 31-8 サンプル

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Current Therapy 2013 Vol.31 No.8 93861Ⅱ EOB造影MRIの位置づけ肝細胞癌に対する画像診断として超音波,造影CT,造影MRI,血管造影などが挙げられるが,特に血管造影CTは侵襲的ではあるが経動脈性門脈造影下CT(CT during arterial portography:CTAP)における門脈血流欠損,肝動脈造影下CT(CT during hepatic arteriography:CTHA)早期濃染,後期コロナ濃染による質的診断を可能とし,肝細胞癌の診断におけるゴールドスタンダードとされてきた3).しかし高分化型肝細胞癌や異型結節,その他の非典型的な肝腫瘍においてはCTAPやCTHAで低~等吸収を示すこともあり,質的診断には至らないことが多い3), 4).Inoueらは,造影dynamic CTとEOB造影MRIによる2cm以下のdysplastic noduleあるいは乏血性の肝細胞癌の診断率を比較し,造影dynamic CTでは61%であるのに対しEOB造影MRIでは95%と有意に高率であったと報告している5).超音波は非侵襲的で小病変の描出にも優れるため肝腫瘍存在診断の第一選択として施行されるが,存在診断は可能でも正確な質的診断までは至らないことが多い.また,術者により技術の差があることや死角があることも診断能を下げる原因となっている.多田らのペルフルブタン(ソナゾイドR)を用いた造影超音波とEOB造影MRIを比較した報告では,古典的肝細胞癌の検出率は造影超音波で87.5%であるのに対しEOB造影MRIでは98.3%と高率であった6).肝細胞癌の発生過程として多段階発癌が考えられているが,その過程において異型度,悪性度の進展を示唆する所見である血流動態の変化や肝細胞機能の変化,細胞密度の変化,脂肪化の出現4),7)~9)などがEOB造影MRIでは一度に観察できるため有用である.また,EOB造影MRIの撮像時に拡散強調像やT2強調像,T1強調像 in/opposed phase画像を加えることで,さらに腫瘍の詳細な質的診断が可能となる.拡散強調像やT2強調像は肝細胞癌の悪性度の評価に優れており,T1強調像 in/opposed phase画像は脂肪成分や微量元素の沈着の評価に優れている.acbd図1古典的肝細胞癌C型慢性肝炎に対してインターフェロン療法が施行されていた.EOB造影MRI(a:T2強調像,b:脂肪抑制T1強調像,c:dynamic MRI早期相,d:造影剤投与20分後,肝細胞造影相).肝S7の肝細胞癌はaでやや高信号,bで低信号,cで不均一に濃染し,dで偽被膜を伴う低信号腫瘍として明瞭に描出されている.