カレントテラピー 31-8 サンプル

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92 Current Therapy 2013 Vol.31 No.8860Ⅰ はじめにGd -EOB -DTPAは,T1短縮効果を有する常磁性の陽性造影剤であるガドキセト酸ナトリウムを有効成分とし,略号が示すとおり,水溶性であるGd -DTPAを基本骨格として側鎖には脂溶性を示すエトキシベンジル(ethoxybenzyl:EOB)基が導入されている.そのため静脈内投与後の体内動態としてはまず細胞外液分布造影剤である通常のGd -DTPAと同様に,主として血管内から細胞間隙に分布するとともに,その後は主として肝細胞に取り込まれ毛細胆管へ排泄される.したがってGd -EOB -DTPA(以下EOB)造影dynamic MRIでは早期相から後期相にかけて肝腫瘍の血流評価が可能で,後期相から肝細胞造影相にかけて正常肝細胞に取り込まれることで高い肝/腫瘍コントラストが得られる.注意点としては,前述したように本造影剤は投与直後から肝細胞に取り込まれるため,造影早期でも純粋な細胞外液分布造影剤とは体内分布が異なる点である.また,一般に古典的肝細胞癌はdynamic MRI早期相に濃染し後期相から肝細胞造影相にかけてwashoutされ低信号になるが,胆汁産生能を有するgreen hepatomaや腫瘍内に偽腺管構造が存在する場合は高信号となることが報告されており1),2),腫瘍の存在診断ばかりでなく,悪性度や胆汁排泄能など性質に対して言及できる一歩踏み込んだ画像診断が可能となる.肝細胞癌治療におけるGd-EOB-DTPAの有用性井上達朗*1・桑鶴良平*2*1 順天堂大学大学院医学研究科放射線診断学講座*2 順天堂大学大学院医学研究科放射線診断学講座教授画像診断の進歩―最新技術とその臨床応用2008年1月,国内初の肝細胞特異性MRI用造影剤であるGd-EOB-DTPA(EOB・プリモビストR)が発売された.Gd-DTPAに脂溶性側鎖であるエトキシベンジル(ethoxybenzyl:EOB)基が導入された本造影剤は静脈内投与後,早期から中期(30秒~3分後)には細胞外液分布造影剤と同様に主として血管および細胞間隙に分布し,後期から肝細胞造影相にかけて(3~20分程度後)には胆汁排泄能を有する正常な肝細胞に取り込まれ,ヒトでは投与量の約40%が毛細胆管へ排泄される.つまり一回の投与でdynamic studyと投与10~20分後の肝細胞造影相を撮像することで肝腫瘍の血流評価と肝細胞機能の評価が可能となる.本稿では,肝悪性腫瘍の代表である肝細胞癌と転移性肝腫瘍におけるGd-EOB-DTPAを用いた造影MRI所見を紹介するとともに,肝細胞癌に対する治療(肝切除,ラジオ波凝固療法:RFA,肝動脈化学塞栓療法:TACEなど)後のGd-EOB-DTPA造影MRIによる評価の有用性について,文献的考察を加えて検討する.a b s t r a c t