カレントテラピー 31-8 サンプル

カレントテラピー 31-8 サンプル page 19/30

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 31-8 サンプル の電子ブックに掲載されている19ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 31-8 サンプル

90 Current Therapy 2013 Vol.31 No.8858Ⅶ 考察本邦では1998年に横山らがRADPLATを紹介し,以後“頭頸部癌の動注化学療法”として急速に普及し動注化学療法全体が見直されるきっかけとなった.2002年の日本頭頸部癌学会の調査結果では,全国45施設139症例の上顎癌において40.3%に大腿動脈経由あるいは浅側頭動脈経由でなんらかの動注化学療法が施行されており,最近ではこれらの動注化学療法の頻度はさらに増加する傾向にあるとされている.このように頭頸部癌の動注化学療法は国内の多くの施設で導入されつつあるが,その手法は施設によりさまざまであり,統一されていないのが現状である.例えば前述のRADPLATのほかにも,①シスプラチンを中和せず緩徐な動注で全身循環の効果を期待する方法,②シスプラチンとの相互作用や放射線増感作用をもつドセタキセルを併用する方法,③Seldinger法を用いず浅側頭動脈から逆行性にカテーテルを留置し,シスプラチンに加え時間依存性の強いフルオロウラシル(5-FU)を持続動注する方法などがあり,それぞれに一長一短がある.また個々の治療法のなかでもさらに諸家によって手技に差異があり,これが国内の治療成績の俯瞰を困難たらしめ,より高いエビデンス形成の妨げとなっている.動注化学療法は,適応を慎重に選ばなければ全身化学療法を上回る治療成績を得ることができない.標準化された手法がないまま,なし崩しに新規の施設参入を許している現状は,結果的に不適切な症例選択,不適切な手技による治療成績の低下をまねき,巡りめぐって本治療そのものの首を絞めることになりかねない.オランダでは頭頸部癌に対するシスプラチンの動注化学療法と全身化学療法とのrandomized trialが各群118例に対して行われ,2006年に結果が報告された6).有害事象として腎障害は動注群のほうが少なく,神経障害が動注群に多いという傾向があり,図4同一症例の術中血管撮影側面像(上段)とアンギオCT矢状断像(下段)左:顔面動脈からの検査では,腫瘍の前半部が増強されている.右:顎動脈の第三分節からの検査では,腫瘍の後方成分が増強されている.