カレントテラピー 31-8 サンプル

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88 Current Therapy 2013 Vol.31 No.8856Ⅳ 適応局所進行頭頸部癌の治療開発は,発症要因・予後の違いから鼻副鼻腔,上咽頭,中咽頭,口腔,喉頭,下咽頭などの原発部位ごとに別々に行われてきた.動注化学療法においても,頭頸部癌のなかでの亜部位によって,また原発巣のサイズや局在によって治療成績は大きく変わり,適応を慎重に選ばなければ全身化学療法を上回る治療成績を得ることはできない.動注化学療法のメリットを発揮できるよい適応としては,1)新鮮例であること2)扁平上皮癌であること3)治療を完遂できる年齢であること(65歳以下,全身状態が良ければ75歳以下)4)一側に限局した腫瘍であること5)大きな腫瘍であること(体積30mL以上)6)内頸動脈系からの栄養がないことなどが考えられる.これらの条件を満たす原発巣としては舌・舌根・上顎歯肉・上顎洞・鼻腔が挙げられる.とりわけ,上顎洞は動注の最もよい適応と考えている.上顎洞癌は全頭頸部癌の3.6%を占め,うち扁平上皮癌が77%と最も多い.初期の段階では自覚症状がほとんどないため早期発見が難しく,発見されたときにはすでに局所進行癌(T3以上)であることが多い.その一方で,リンパ節転移や遠隔転移が少なく,すなわち局所制御が予後に直結しやすい.上顎に対する部分切除術や全摘術は術後の機能障害や美容面でのQOLの低下が著しく,非観血的で局所に高い治療効果をもたらす動注は,より有用な治療法と考えられる.なお下咽頭癌については,原発巣が制御されても遠隔転移が後に出現することが多く,慎重に適応を決める必要がある.その他,遠隔転移に関してはいうまでもなく適応外であるが,頸部リンパ節転移はN2症例までは適応としている.Ⅴ 方法通常のSeldinger法として大腿動脈からアプローチを行い,ガイディングカテーテルとマイクロカテーテルの同軸システムを頸部動脈まで誘導する.システムはヘパリン下生理食塩水の持続灌流と,症例によっては全身ヘパリン化の併用により血栓塞栓症を予防している.腫瘍の栄養動脈と目される複数の動脈群に順次マイクロカテーテルを留置し,アンギオCTを撮像して当該動脈の支配領域を画像化する.この作業を栄養動脈の数だけ行い,腫瘍のすべての領域の供血源が判明したら,それぞれの動脈から供血量に応じたシスプラチンを動注する.動注する総量は Robbinsの原法では150mg/m2であるが,本邦においてはこれを減量している施設も多く,当院では100~120mg/m2で行っている.動注の開始と同時にチオ硫酸ナトリウムの点滴静注を開始し,全身循環におけるシスプラチンの中和を行う.手技が終了し帰室後は十分な補液と利尿剤を用いたハイドレーションを行う.この動注化学療法を毎週1回,計4回行い,これと並行して放射線治療を連日(70Gy/35fr/7週)施行する(図2)3).外照射は強度変調放射線治療(intensitymodulated radiation therapy:IMRT)が理想的であろうが,入念に計画されたthree-dimensionalconformal radiation therapy(3D-CRT)でも十分な治療効果が得られる.1回の動注に要する時間は,アンギオCTを用いた栄養動脈の分析が必要な初回と,シスプラチンの注入のみでよい2回目以降で変わってくる.例えば栄RT70Gy/35fr/7週シスプラチン(I.A.)(100~120mg/m2)0 2 4 6(週)図2 RADPLATの治療プロトコール〔参考文献3)より引用改変〕