カレントテラピー 31-8 サンプル

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カレントテラピー 31-8 サンプル

36 Current Therapy 2013 Vol.31 No.8804であることから,脳動静脈奇形や硬膜動静脈瘻の診断のほか,脳腫瘍の血管床の評価などにも有用である.1 脳動静脈奇形脳動静脈奇形(arteriovenous malformation:AVM)は動静脈の異常な直接吻合からなり,吻合部はナイダスとよばれる血管塊を形成する.脳・脊髄領域のいずれにも認められるが,その約85%が大脳半球である.MRIでは,ナイダスに相当するflowvoidの集簇像と拡張蛇行する異常血管が認められる.破裂の既往があるとさまざまな時期の出血がみられ,病巣周囲の脳組織にはグリオーシス,変性,萎縮などを伴う場合が多い.Time-Of-Flight(TOF)法を用いた通常のMRAでAVMは描出可能だが,血流の速い部分しか描出されないという欠点がある.MR -DSAは,動脈から静脈までの血行動態を描出できるため,AVMの診断や治療後の経過観察に有用である(図2).2 硬膜動静脈瘻硬膜動静脈瘻(dural arteriovenous fistula:dAVF)は硬膜に発生する動静脈の短絡で,流入血管は各動脈の硬膜枝で,多数の小さな短絡が存在することが多い.TOF法のMRAでも流速が早ければ動静脈短絡の部位を推定できる.MR-DSAを行えば,動静脈短絡が直接描出でき診断を確定できる.3 血管芽腫血管芽腫は良性腫瘍で成人の後頭蓋窩腫瘍の10%を占める.ほとんどが小脳あるいは延髄や脊髄に発生し,テント上発生はきわめてまれである.また嚢胞を伴う場合が60~70%にみられ,この場合の嚢胞壁は薄く増強されない.腫瘍の壁在結節は血流に富むため,MR -DSAで動脈早期相から描出される.この所見は血管芽腫に特徴的である.Ⅳ FIESTA法FIESTA法は,完全な定常状態(steady -state)を用いて強いT2強調画像を得るパルスシーケンスである.Steady-stateではfree induction decay(FID)信号とspin echo(SE)信号およびstimulated echo(STE)信号が発生するが,FIESTA法はそれらすべての信号を用いて画像を作っている.FID信号はradiofrequency pulse(RFパルス)の後ろに,SE信号はRFパルスの前後に発生するが,傾斜磁場のかけ方により二つの信号を同時に発生させることができる.しかし,わずかな磁場の不均一によりこれらの信号は位相がずれて干渉を起こし,縞状のアーチファクトが生じる.FIESTA法では,高い磁場の均一性と短いTRを用いることでこの位相のずれを抑えている.これにより,位相のずれによるアーチファクトを発生させることなくFID信号,SE信号,STE信号を同時に取り込み,高いS/N比を比較的短時間で得ている3),4).3次元FIESTA法の空間分解能はボクセルサイズで0.8×0.6×0.6cmであり,当院で図2 右側頭下窩の動静脈奇形MR -DSAで右側頭下窩のナイダス(矢印)が動脈相早期から描出され,流出静脈も確認できる.