カレントテラピー 31-7 サンプル

カレントテラピー 31-7 サンプル page 27/32

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 31-7 サンプル の電子ブックに掲載されている27ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 31-7 サンプル

82 Current Therapy 2013 Vol.31 No.774811β水酸化ステロイド脱水素酵素(11β-HSD)京都大学医学部附属病院内分泌代謝内科講師 曽根正勝全身の血中コルチゾール濃度は主に視床下部・下垂体・副腎系によって制御されるが,個々の細胞におけるコルチゾール作用を調節する酵素として11β水酸化ステロイド脱水素酵素(11β-hydroxysteroid dehydrogenase:11β-HSD)が挙げられる.11β-HSDはコルチゾールとコルチゾンの代謝にかかわる酵素であり,1型(11β-HSD1)と2型(11β-HSD2)の2つのアイソフォームがある.11β-HSD1はコルチゾンをコルチゾールに変換する働きをもち,逆に11β-HSD2はコルチゾールをコルチゾンに変換する働きをもつ.肥満の脂肪組織では11β-HSD1の発現や酵素活性が上昇するといわれており,脂肪酸や炎症性サイトカインなどによる11β-HSD1活性化が脂肪組織局所のコルチゾール作用の過剰を引き起こし,肥満症やインスリン抵抗性の病態の一因になっている可能性が指摘されている.また,脂肪細胞や血管構成細胞ではもともと11β-HSD2活性が低く,上記の11β-HSD1活性化がもたらす局所のコルチゾール上昇によるミネラルコルチコイド受容体(mineralocorticoid receptor:MR)活性化が肥満症の病態に関与する可能性も指摘されている.MRはin vitro ではコルチゾール,アルドステロンに対する親和性はほぼ同等だが,通常は11β-HSD2がコルチゾールをMRへの親和性の低いコルチゾンに変換することにより,コルチゾールのMRへの作用をブロックする門番の役割を果たしている.この11β-HSD2の酵素活性が障害されるとコルチゾールのMRへの作用が増強し,ミネラルコルチコイド過剰と同様の臨床症状がもたらされることとなる.例えば,apparentmineralocorticoid excess syndrome(AME:症候群)は,その名の示すとおり,血中のミネラルコルチコイドが低いにもかかわらず“見かけ上ミネラルコルチコイド過剰の症状”を呈する常染色体劣性遺伝疾患であるが,その病態は11β-HSD2のヒト遺伝子HSD11B2の異常により引き起こされる.また,甘草やグリチルリチン製剤による偽性アルドステロン症についても,甘草の主成分であるグリチルリチンが加水分解されて生成されるグリチルレチン酸が11β-HSD2阻害作用を有することが知られており,病態の原因であると考えられている.原発性アルドステロン症―診断と治療の新展開