カレントテラピー 31-7 サンプル page 25/32
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カレントテラピー 31-7 サンプル
Current Therapy 2013 Vol.31 No.7 79治療薬解説745はAPAと比べてIHAで大きかったと報告されている9).しかし,長期効果を検証した報告はほとんどない.さらに,MR拮抗薬が有効に作用するとレニン,アンジオテンシンⅡの抑制が解除され,ともに正常化あるいは増加する.増加したアンジオテンシンⅡはアンジオテンシン受容体を介して昇圧,臓器障害作用を発現するためMR阻害薬の降圧効果,臓器保護効果が減弱する可能性がある.この状態ではレニン阻害薬,ACE阻害薬,ARBの併用が追加降圧や臓器保護に有用である.また,塩分負荷モデル動物では,循環血中レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系が抑制されていても組織RA系は不変あるいは亢進しており,臓器障害の増悪因子となる.PAにおける組織RA系の状態は不明であるが,循環血中RA系と組織RA系の動態が乖離している可能性を考慮し,組織RA系抑制,臓器保護の観点からPAにおけるMR拮抗薬とRA系阻害薬の併用は有用であると推測される.ただし併用に際しては高K血症の出現に十分な注意が必要である.Ⅴ ステロイド合成酵素阻害薬ステロイド合成(図1)に関与する3β水酸化ステロイド脱水素酵素を阻害するトリロスタン,11β水酸化酵素を阻害するメチラポンが用いられる.いずれもアルドステロン低下作用はあるが降圧作用は弱く,コルチゾール分泌も抑制するため副腎不全を生じる危険がある.またトリロスタンは短期的には有用であるが,長期的には有用性は低いとの報告もある.近年,副腎皮質球状層でのアルドステロン合成を特異的に抑制するアルドステロン合成酵素阻害薬の開発が試みられている.閉経後乳癌治療薬として使用されるアロマターゼ阻害薬Fadrozoleの光学異性体であるR -Fadrozoleが,アルドステロン合成酵素であるCYP11B2の特異的阻害作用を有することが明らかとなり,経口薬が合成され海外で治験が施行されている.PAに対して有意な血漿アルドステロン濃度の低下,血漿レニン濃度の正常化,降圧と低K血症の改善を示す10).しかし,エプレレノンとの比較では,降圧効果,低K血症改善効果ともに本薬剤の効果が弱いことが報告されている11).また,本薬剤は同時にコルチゾール合成酵素に対する軽度の阻害作用も確認されていることから副作用として副腎不全が懸念され,臨床応用にあたっては今後さらなる検討が必要である.コレステロールプレグネノロンプロゲステロンデオキシコルチコステロン(DOC)コルチコステロン18水酸化コルチコステロンアルドステロン17水酸化プレグネノロン17水酸化プロゲステロン11デオキシコルチゾールコルチゾール17α水酸化酵素21水酸化酵素コレステロール側鎖切断酵素3β水酸化ステロイド脱水素酵素11β水酸化酵素(CYP11B1)アルドステロン合成酵素(CYP11B2)デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)アンドロステンジオンテストステロンジヒドロテストステロンエストロンエストラジオールアロマターゼ図1ステロイド合成経路