カレントテラピー 31-7 サンプル

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Current Therapy 2013 Vol.31 No.7 77743Ⅱ ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬PAに対する薬物治療の第一選択薬はMR拮抗薬である.スピロノラクトンは代表的なMR拮抗薬であり,K保持性利尿薬としてPA以外の病態にも汎用されてきた.PAではMRの阻害を介してアルドステロン過剰による高血圧および低K血症を是正する.通常25~100mg/日を投与するが,重症例では150mg/日以上を要する場合もある.PAではアルドステロン作用を急激に阻害すると血清クレアチニン上昇,推算糸球体濾過量(estimated glomerularfiltration rate:eGFR)低下を呈する症例が高頻度にみられることから,本剤は少量から漸増し投与後の腎機能や血清K値の変化をモニターする必要がある.副腎手術例では術前のスピロノラクトン投与で術後の降圧効果や腎機能悪化の有無を予測することが可能である.心不全,本態性高血圧症に対するスピロノラクトンの臓器保護作用については, すでにRALESstudy1)をはじめとする各種の報告がなされている.PAでも近年スピロノラクトンの有効性が検討され,323例の本態性高血圧と54例のPA(手術治療24例およびスピロノラクトン治療30例)の予後を平均7.4年間観察した結果,両群間で左室肥大の改善の程度,心血管系合併症の頻度に差を認めなかったと報告されている2).副腎摘出術を受けたAPA群24例とスピロノラクトン治療を受けたPA群30例(APA 5例およびIHA 25例)においても2群間に心血管系合併症の頻度に差を認めなかった.特にアルドステロン自律分泌能の弱い傾向にあるIHA症例におけるスピロノラクトンの有効性は高いと考えられる.しかしながらスピロノラクトンには種々の副作用がみられ,高用量を長期に投与する際の障害となる.スピロノラクトンはMRに対して高い親和性を有すると同時にアンドロゲン受容体,プロゲステロン受容体にも中等度の親和性を有する.心不全患者に対するRALES study1)では投与量25mg/日が用いられたがPAの高血圧,低K血症改善には通常50mg/日以上を要する.このような高用量では抗アンドロゲン作用,プロゲステロン作用のため男性では性機能障害,女性化乳房・乳房痛,女性では月経異常,乳房痛などの副作用が高頻度に出現する.投与量50mg/日では約7%,150mg/日では約52%に女性化乳房がみられると報告されている3).これに対してMR以外のステロイド受容体に対する親和性が低い薬剤として開発されたMR阻害薬がエプレレノンである.エプレレノンはアンドロゲン受容体,プロゲステロン受容体に対する親和性をほとんど有さず4)スピロノラクトンでみられる副作用がない.エプレレノンの投与量はスピロノラクトンと同様25~100mg/日であるが,MR阻害効果はスピロノラクトンの60~80%であり,半減期も短い.このため,エプレレノンは一日二回の分割投与が必要である.また,本邦では添付文書上,K製剤との併用,微量アルブミン尿またはタンパク尿を伴う糖尿病患者,クレアチニンクリアランス50mL/分未満の腎機能障害患者には禁忌であるため適用に注意を要する.近年PAに対する二重盲検試験によるスピロノラクトン(75~225mg/日)とエプレレノン(100~300mg/日)の短期効果比較の結果が発表された5).16週間の投与で降圧効果はエプレレノンがスピロノラクトンに比べて収縮期血圧で平均17.1mmHg,拡張期血圧で平均6.9mmHg劣っていた.しかし,血血漿レニン活性(PRA)血漿アルドステロン濃度(PAC)PAC/PRA比ACE阻害薬 ARB ↑ ↓ ↓β遮断薬↓↓ ↓ ↑Ca拮抗薬↑ ↓ ↓MR拮抗薬↑↑ ↑ ↓利尿薬↑↑ ↑ ↓表1血漿レニン活性,血漿アルドステロン濃度に対する降圧剤の影響ACE:アンジオテンシン変換酵素ARB:アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬MR:ミネラルコルチコイド受容体