カレントテラピー 31-7 サンプル

カレントテラピー 31-7 サンプル page 22/32

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 31-7 サンプル の電子ブックに掲載されている22ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 31-7 サンプル

76 Current Therapy 2013 Vol.31 No.7742Ⅰ はじめに原発性アルドステロン症(primary aldosteronism:PA)の主な原因はアルドステロン産生副腎腺腫(aldosterone producing adenoma:APA)と特発性アルドステロン症(idiopathic hyperaldosteronism:IHA)である.1980年代には低カリウム(K)血症を伴う高血圧症例を対象として本症のスクリーニングが行われ,明らかな副腎腫瘍の存在によってPAと診断されることが多かったため,IHAに比べてAPAの頻度が高かった.しかし,1990年以降は低K血症の有無にかかわらず高血圧全体を対象にスクリーニングされ,腫瘍の有無にかかわらず選択的副腎静脈サンプリング(adrenal venous sampling:AVS)を用いて局在診断されることが多くなった.その結果,APAに比べてIHAあるいはIHA疑い症例の頻度が増加している.PAの治療は一側性病変が明らかになれば手術療法(腹腔鏡下患側副腎摘出術)が第一選択である.薬物療法が選択されるのは①両側性病変(主にIHA)と診断された場合,②局在診断がつかない場合,③患者が手術を希望しないあるいは合併症などの種々の状況により手術が施行されない場合,④術前に血圧,低K血症の是正を行う場合である.アルドステロンのミネラルコルチコイド受容体(mineralocorticoidreceptor:MR)を介する作用を阻害するスピロノラクトンあるいはエプレレノンが第一選択薬であるが,目標血圧を達成できない場合は各種降圧剤のレニン,アルドステロン動態への影響(表1)を考慮して,レニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬,カルシウム(Ca)拮抗薬などの降圧剤を併用する.一方,PAにおけるMR拮抗薬とそれ以外の薬物治療,APAにおける手術療法とMR拮抗薬の長期予後に対する効果の相違は明らかではない.原発性アルドステロン症の薬物治療田辺晶代*1・市原淳弘*2*1 東京女子医科大学第二内科(高血圧・内分泌内科)講師*2 東京女子医科大学第二内科(高血圧・内分泌内科)主任教授原発性アルドステロン症―診断と治療の新展開原発性アルドステロン症(primary aldosteronism:PA)に対する第一選択薬はミネラルコルチコイド受容体(mineralocorticoid receptor:MR)拮抗薬であるが,目標血圧に達しない場合はカルシウム(Ca)拮抗薬,レニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬を併用する.副腎腺腫症例ではレニン阻害薬,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)の効果は低いと考えられるが,特発性アルドステロン症(idiopathic hyperaldosteronism:IHA)ではこれらのRA系阻害薬およびアルドステロン分泌抑制作用を有するCa拮抗薬による降圧効果が期待できる.近年,副腎皮質球状層でのアルドステロン合成を特異的に抑制するアルドステロン合成酵素阻害薬の開発が試みられているが,現時点では既存のMR受容体拮抗薬と比較して降圧効果,低カリウム(K)血症改善効果ともに弱いことが報告されている.a b s t r a c t