カレントテラピー 31-6 サンプル

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Current Therapy 2013 Vol.31 No.6 11腎臓病の病態569形質転換および増殖させるとともにコラーゲン産生を活性化させる.しかしながらTGF -βには抗炎症作用も存在し,TGF -β自体を阻害すると副作用が懸念されることから,TGF -βの調節因子を標的とした治療戦略が考慮されている.われわれはTGF-βの作用を抑制する因子として骨形成タンパクのひとつであるBone Morphogenetic Protein(BMP)7およびその調節因子に着目した.1 腎臓特異的BMPアンタゴニストUSAG-1について2003年Zeisbergらは骨形成因子のひとつであるBMP7を慢性腎不全モデルに投与すると腎機能が回復することを報告し15),BMP7は新規腎臓病治療薬として期待された.しかしながら外来性のBMP7を全身投与すると,投与されたBMP7の取り込みは腎よりもむしろ肝臓で多く,効率的でない.さらにBMP7の作用を受ける細胞は全身に分布していることから他臓器における副作用が懸念され実用化に至っていない.筆者らはBMP7を大量投与しないと効果が出ない理由のひとつとしてBMPの活性を阻害するアンタゴニストの存在を想定し,ゲノムワイドな臓器特異的遺伝子検索を行い新規腎臓特異的BMPアンタゴニストであるuterine sensitizationassociated gene - 1(USAG - 1)を発見した16).USAG-1の発現は腎臓特異的であり,腎臓内では遠位尿細管に限局する.USAG-1欠損マウスは歯牙の形成異常以外には発達異常をきたさず,成体マウスに各種尿細管障害モデルを惹起すると,野生型に比して急性腎不全や尿細管間質の線維化に抵抗性であった.さらにBMP7の中和抗体を投与することでこの抵抗性は失われることから,USAG-1欠損マウスの腎障害抵抗性は内因性のBMP7活性増強を介したものと推定された.2 緻密斑を介した新たな糸球体尿細管クロストークさらに筆者らは糸球体障害においてもUSAG-1が重要な役割を果たすことを見出した17).アルポート症候群は5,000人に1人の遺伝疾患であるが,糸球体基底膜の重要な構成分子であるⅣ型コラーゲンα鎖の変異により成人型の強固な基底膜が形成できず,マトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metalloprotease:MMP)などの働きにより脆弱な胎児型の基底膜の断裂をきたす.40歳までには高率に腎不全に進行するが現時点で特異的な治療法は存在しない.アルポート症候群のモデルマウスであるCol4α3欠損マウスは10週齢までに腎不全に陥って死亡するのに比べ,Col4α3とUSAG -1のダブルノックアウトマウスでは腎機能が保たれ長期生存し,組織変化も軽微であった.このモデルにおいてもUSAG-1は遠位尿細管に限局しており,糸球体内には発現していない.遠位尿細管に発現するUSAG-1が糸球体に影響する経路として,筆者らは緻密斑に注目し,USAG -1とBMP7が緻密斑に発現しており,そのすぐ近傍に存在するメサンギウム細胞におけるMMPの発現をUSAG -1が促進し,BMP7が抑制していることを明らかにした.この遠位尿細管と糸球体のクロストークは糸球体および尿細管の障害が連動して進行するメカニズムの一端を説明するものである.Ⅳ おわりに本稿では線維化を起こす細胞群と,線維化における障害尿細管上皮細胞の役割,TGF -βの調節因子を標的とした治療戦略について述べた.腎臓の線維化のメカニズムにはまだ不明な点も多いが,新たな知見も徐々に蓄積されてきており,病態の本質に迫るさらなる研究の発展が期待される.参考文献1)Liu Y:Cellular and molecular mechanisms of renal fibrosis.Nat Rev Nephrol 7:684-696, 20112)Boor P, Ostendorf T, Floege J:Renal fibrosis:novel insightsinto mechanisms and therapeutic targets. Nat Rev Nephrol6:643-656, 20103)Kriz W, Kaissling B, Le Hir M:Epithelial -mesenchymaltransition(EMT)in kidney fibrosis:fact or fantasy? J ClinInvest 121:468-474, 20114)Humphreys BD, Lin SL, Kobayashi A, et al:Fate tracingreveals the pericyte and not epithelial origin of myofibroblastsin kidney fibrosis. Am J Patho 176:85-97, 20105)Nangaku M, Eckardt KU:Pathogenesis of renal anemia.Semin Nephrol 26:261-268, 20066)Obara N, Suzuki N, Kim K, et al:Repression via the GATA