カレントテラピー 31-6 サンプル

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8 Current Therapy 2013 Vol.31 No.6566Ⅰ 腎線維化と腎性貧血1 腎線維化を担う細胞腎臓の線維化は健康な腎臓には存在しないα-smooth muscle actin(SMA)陽性myofibroblastが細胞外マトリックスを過剰に産生することにより引き起こされる.しかしながら,その生物学的重要性にもかかわらず,このαSMA陽性myofibroblastの由来については一定した見解がなく,さまざまな説が提唱されてきた1), 2).代表的な説として,①尿細管上皮細胞が形質転換して間質に移入しαSMA陽性myofibroblastになるというepithelial mesenchymaltransition(EMT)説,②コラーゲンを発現する血球由来のfibrocyteが組織に遊走しαSMA陽性myofibroblastに形質転換するという説,③健康な腎臓の間質に存在するfibroblastがαSMA陽性myofibroblastに形質転換する説などがあり,これらの是非をめぐってさまざまな議論がなされている3).また近年はpericyteとよばれる尿細管の毛細血管周囲に存在する細胞が毛細血管から剥離し,αSMA陽性myofibroblastに形質転換するという説も報告されている4).2 腎性貧血とEPO産生細胞CKDの進行とともに発症する病態として腎線維化とともに腎性貧血が挙げられる.腎臓は赤血球の成熟に必須なエリスロポエチン(EPO)を産生する内分泌臓器でもあるが,腎機能の低下に伴い適切なEPO産生が損なわれ,それに伴い腎性貧血を発症することが示されている5).EPOは近位尿細管周囲の間質に存在する線維芽細胞によって産生される.EPO産生細胞は神経細胞の性質も併せもつユニークな細胞であることが報告されているが6),この細胞の由来,および腎機能の低下とともにこの細胞の腎線維化佐藤有紀*1・柳田素子*2腎臓は排泄臓器であると同時に赤血球造血に必須であるエリスロポエチン(erythropoietin:EPO)を産生する内分泌臓器でもある.慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)は基礎疾患を問わずある程度進行すると線維化およびEPO産生不全による腎性貧血を呈することが知られているが,その発症機序に関しては不明な点が多い.われわれは最近,腎臓の線維化と腎性貧血は発生段階に胎児腎に移入した1種類の細胞の機能不全によって発症する一連の病態であることを見出した.さらにこの細胞を制御する薬剤の探索を行い,腎性貧血や線維化を抑える薬剤を見出すとともにこれらの細胞の可塑性を証明し,これらの細胞を標的とした治療の可能性を示している.本稿では上記に加え腎臓の線維化の病態形成における最近の知見および治療の展望についてわれわれの研究の知見を中心に述べる.*1 京都大学大学院医学研究科腎臓内科学講座*2 京都大学大学院医学研究科腎臓内科学講座教授腎臓病の up to date―病態に基づいた治療の最前線