カレントテラピー 31-6 サンプル

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Current Therapy 2013 Vol.31 No.6 87645Critical care nephrology東京大学医学部附属病院集中治療部特任講師 土井研人Critical care nephrologyとは10年余りの歴史を有する新しい学問領域であり,集中治療学(Critical Care Medicine)と腎臓病学(Nephrology)が融合した集学的分野(multidisciplinaryfield)といえる.このような新たな学問領域が提唱された背景として,急性腎不全(acute renal failure:ARF)の疾患スペクトラムが,外来あるいは一般病棟にて発生する腎臓に限局された単一臓器不全から,集中治療の主要なターゲットである敗血症・多臓器不全の一分症として生じる腎機能障害に移行したことが挙げられる.後者の病態は,近年になり急性腎障害(acute kidney injury:AKI)と言い換えられた.AKIの死亡率は急性心筋梗塞や脳卒中(heart attack,brain attack)と比較して有意に高いことから,2013年世界腎臓デーのテーマとして“StopKidney Attack!”という標語とともにAKIが採用され,専門外の医療従事者および一般社会への啓発も進められている.Claudio Ronco(腎臓病学)とRinaldo Bellomo(集中治療学)は,ICU領域の敗血症・多臓器不全に合併したAKIに対する有効な治療戦略の研究開発およびその実施に際して,集中治療医(intensivist) と腎臓内科医(nephrologist)のより強固な連携とともに,両分野にわたるトレーニングプログラムの確立と人材養成が必須であるという提言を行った(Nephrol Dial Transplant 13:264-267,1998).本論文が出版されてから15年が経過したが,少なくともわが国においてはいまだcritical care nephrologyを専攻する研究者・臨床家は数少なく,急性心筋梗塞や脳卒中よりも高い死亡率を呈するAKIの治療成績の向上には,critical care nephrologyという集学的分野を体系的に学習できるプログラムの確立が必要不可欠であると思われる.東京大学医学部臨床研究者育成プログラムにおいては,critical care nephrologyの医学部生教育プログラムがあり,新たな分野における人材育成に取り組んでいる(http://cr.umin.jp/index.html).腎臓病の up to date―病態に基づいた治療の最前線