カレントテラピー 31-6 サンプル page 26/32
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カレントテラピー 31-6 サンプル
Current Therapy 2013 Vol.31 No.6 81治療薬解説639介入試験(AASK試験,MDRD試験,REIN-2試験)のメタ解析では,厳格な降圧群(目標血圧125~130/75~80mmHg未満)と緩徐な降圧群(目標血圧140/90mmHg未満)を比較したが,CKD進行に差が認められなかった6).糖尿病性腎症を対象としたACCORD BP試験でも,厳格降圧の有効性に疑問が残る結果が報告されている.2012年12月に発刊されたKDIGOの高血圧管理のガイドラインでは,糖尿病の有無にかかわらず,目標血圧は尿アルブミンのある群で130/80mmHg以下,ない群では140/90mmHg以下と設定された.一方,日本の『CKD診療ガイド2012』では,すべてのCKD患者で降圧目標は130/80mmHg以下とされた(表2).ただし,65歳以上の高齢者では病態に応じたテーラーメイドの降圧療法を行うこと,厳格な降圧を目指す場合でも140/90mmHgを暫定目標として,その後慎重に130/80mmHg以下を目標に降圧を目指すことが推奨されている.『CKD診療ガイド2012』における血圧管理の第二の変更点は薬剤選択に関するものである.従来はすべてのCKD患者にRA系阻害薬が第一選択として推奨されていたが,タンパク尿のない症例においてはエビデンスが明確でないことから,今回はこの群では特に指定されていない(図2).一方,高齢腎硬化症患者では動脈硬化性腎動脈狭窄がある可能性もあり,過度の降圧による腎機能低下が懸念されるという背景もある.今回,KDIGOのガイドラインではテーラーメイドの血圧管理が強調されている7).『CKD診療ガイド2012』では非専門医にもわかりやすいことを第一として,エビデンスが十分でないところもあえて踏み込んだ記述となっている.しかし,あくまで患者ごとに降圧目標と降圧薬の選択を考えていくことが肝要である点をここで再度強調しておきたい.Ⅴ おわりに米国で始まったCKD啓発活動は世界に広がっている.わが国においても,少なくとも医療関係者の間ではCKDという言葉はしっかりと定着していると思われる.CKD啓発活動開始10年を迎えた2012年に日本腎臓学会から『CKD診療ガイド2012』が発刊された.本稿では特に尿検査の重要性と血圧管理の改定点を強調したが,そのほか貧血管理にも重要な変更がなされている.さらに2013年は『CKD診療ガイドライン』も発刊予定であり,CKD診療は常に進化を続けているといえる.こうしたガイドラインが日本のCKD診療のさらなる進展に貢献するものと期待されている.参考文献1)日本腎臓学会編:CKD診療ガイド2012. 日本腎臓学会誌 54:1031-1189, 20122)KDIGO Clinical Practice Guideline for the Evaluation andManagement of Chronic Kidney Disease. Kidney Int Suppl3:20133)Tani Y, Nakayama M, Kanno M, et al:The ClinicalA p p l i c a b i l i t y o f A l b u m i n u r i a T e s t i n g i n J a p a n e s eHypertensive Patients:The AVA -E Study. Intern Med52:425-430, 20134)Sleight P, Redon J, Verdecchia P, et al;ONTARGET investigators:Prognostic value of blood pressure in patients withhigh vascular risk in the Ongoing Telmisartan Alone and incombination with Ramipril Global Endpoint Trial study. JHypertens 27:1360-1369, 20095)Appel LJ, Wright JT Jr, Greene T, et al;AASK CollaborativeResearch Group:Intensive blood-pressure control in hypertensivechronic kidney disease. N Engl J Med 363:918-929,20106)Upadhyay A, Earley A, Haynes SM, et al:Systematicreview:blood pressure target in chronic kidney disease andproteinuria as an effect modifier. Ann Intern Med 154:541-548, 20117)KDIGO Clinical Practice Guideline for the Management ofBlood Pressure in Chronic Kidney Disease. Kidney Int suppl2:2012