カレントテラピー 31-6 サンプル

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Current Therapy 2013 Vol.31 No.6 79治療薬解説637唱された.これにより,従来の糖尿病性腎症の病期分類とも整合性がつく形でCKD重症度が定義されることとなった.新分類は臨床の実感により合致するものであるが,より複雑となったため実地診療の先生方からの評判は必ずしもよくない.しかし,図1を見ていただければその意義が理解できるであろう.同じeGFRであっても,アルブミン尿あるいはタンパク尿の程度によって予後が明らかに違っている.限られた医療資源をより効率的に使用するためには,積極的な治療介入が必要な患者を効率よく選別することが求められている.Ⅲ 尿検査のすすめ腎臓病診療において,検尿は不可欠である.しかし一般の日常臨床現場では必ずしも十分に施行されていないようである.尿試験紙で陽性(+1以上)となるのは20歳以上の日本人の約3%と推計されており,尿タンパク陽性となる症例が必ずしも多くないことも尿検査が普及しない一因と考えられる.しかし,AVA -E研究で8,628名の日本人高血圧患者の尿を調べたところ,約40%で微量アルブミン尿あるいは顕性アルブミン尿が検出された3).また,非糖尿病患者に限っても38.8%がアルブミン尿陽性であった.この結果は,高血圧患者におけるアルブミン尿の頻度は高く,糖尿病性腎症のマーカーとは限らないことが明らかになった重要な報告である.日常的に尿検査を施行しない別の理由として,CKD患者ではレニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬を使用し血圧を低めにコントロールしているため,たとえ尿タンパクが陽性であってもそれ以上の治療介入ができないとの声も聴かれる.しかし,そうしたCKD患者であっても生活習慣(塩分摂取過剰,運動不足,肥満,喫煙,飲酒など)への介入により,さらなる改善が見込まれ,早期の微量アルブミン尿であれば消失することも期待できる.また,微量アルブミン尿の測定は治療効果判定にも利用できる可能性がある.当初本邦でCKD啓発活動を始めるにあたり,米国のeGFR推算式が日本人には適応できないという大きな問題があった.そこで,日本腎臓学会が中心となって日本人のeGFR推算式が作成された.この推算式は広く利用され,日本のCKD診療を大きく前進させる原動力となった.しかし,この推算式も日本独自の課題が存在する.前述のごとく,アルブミン尿測定は糖尿病患者にしか保険適用されていないのである.最近は測定精度が向上しているため,尿タンパク定量を行えばアルブミン尿定量は必要ないという見解もある.しかし,CKDに関して世界標準で比較し議論するためには,微量アルブミン尿測定は必須と考える.今後,アルブミン尿定量の保険適用拡大に向けた政策提言を行うことも必要であろう.日本人のeGFR推算式の開発と普及がCKD診療を進展させたように,アルブミン尿測定の実現と普及がさらなる発展をもたらすものと期待している.アルブミン尿かタンパク尿かという課題は残るが,尿検査がCKD診療には欠かせないという認識は腎臓内科専門医には共通のものであろう.今後のKDIGO2012の降圧目標降圧目標第一選択薬アルブミン尿あり130/80mmHg以下ACEI/ARBアルブミン尿なし140/90mmHg以下規定なしCKD診療ガイド2012の降圧目標降圧目標第一選択薬糖尿病または130/80mmHg以下ACEI/ARBタンパク尿ありタンパク尿なし130/80mmHg以下規定なし*65歳以上の高齢者はまず140/90mmHg以下が目標となる.その後,慎重に130/80mmHg以下に降圧させる.表2CKDの降圧療法CKD患者の降圧目標と第一選択薬が一部改定されている.