カレントテラピー 31-6 サンプル page 19/32
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カレントテラピー 31-6 サンプル
Current Therapy 2013 Vol.31 No.6 69代替療法627ニンよりも尿素窒素,クレアチニン濃度が高いことから,この新規腎臓はレシピエント動物の血液をろ過し濃縮していることが明らかとなった14).加えてこの新規腎臓は,レシピエント動物を貧血状態にするとヒトEPOを産生することから,レシピエント環境により制御されたEPO産生能をもつことが確認された15).しかし,この方法では尿管芽から派生する集合管および尿管系を構築することができないため,次にニワトリ胚を利用してヒトMSCsが尿管芽に分化可能かを検討した.Pax2 を遺伝子導入したヒトMSCsをニワトリの尿管芽の前駆領域に注入した結果,ヒトMSCsはウォルフ管の伸長とともに頭側へ移動し,ウォルフ管上皮へ取り込まれた16).これは,ヒトMSCsを適切な時期と場所に異種胚に注入すれば,ウォルフ管に分化することが可能であることを示唆しており,今後,最終的にウォルフ管から延びる尿管芽から分化する尿管系をも再構築することで,腎臓全体を再生することが期待される.また,この異種胎仔を用いてつくられた新規腎臓は,異種動物とのキメラ構造を呈している.異種部分を排除するためには,過去に報告したように7),自殺遺伝子を導入した動物を用いて腎臓を再生し,最終的に異種部分を排除することで完全にヒト細胞からなる腎臓をつくる必要がある.このように,この異種胎仔を用いた腎臓再生において克服すべき課題は多いが,それらを克服できるように日夜努力している.Ⅳ 胚盤胞補完法を用いた腎臓再生1993年,Chenらは,T細胞・B細胞をもたないrecombination -activating gene 2(RAG -2 )欠損マウスの胚盤胞に正常なマウスの胚性幹細胞(embryonic stem cells:ESCs)を注入して誕生したマウスは,正常なマウスのESCs由来のT細胞・B細胞をもつことを報告した17).これは胚盤胞補完とよばれ,近年,臓器欠損動物と幹細胞を使用した胚盤胞補完法を用いることにより膵臓18),肝臓19),腎臓20)を再構築する研究が報告され,注目を集めている.膵臓では,膵臓の発生に必要なpancreatic andduodenal homeobox 1(Pdx1 )を欠損したマウスの胚盤胞にラットiPSCsを注入すると, ラットiPSCs由来の膵臓をもったラット・マウスキメラが誕生することがわかっている18).これは,臓器欠損動物を用いることで,外部から注入した幹細胞由来の臓器をin vivo で再構築することができることを示唆している.また,大型動物であるブタを用いた実験においても,膵臓欠損ブタの胚盤胞に正常なブタiPSCsを注入することで,iPSCs由来の膵臓を構築することができることも示されている21).腎臓に関しては,その発生に必須なSAL -like 1(Sall1 )の欠損したマウスの胚盤胞に対し,マウスのiPSCsを注入することで,外部iPSCs由来の腎臓をもつマウスを作製することができると報告されている20).胚盤胞補完法を用いた臓器再生のメリットは,第一に腎臓のような繊細な構造をした臓器を再構築することができること,第二に臓器欠損モデル動物を用いることで,前述した異種胎仔に幹細胞を注入する方法に比べてほとんどが外部幹細胞由来の臓器をつくることができ,異種動物由来の細胞の割合(キメラ率)を低下させることができることである.しかしながら,胚盤胞補完法を用いた腎臓再生にはいくつかの克服すべき問題点が存在する.まず,ラットiPSCsをこのSall1 欠損マウスの胚盤胞に注入しても,ラットiPSCs由来の腎臓はできないことがわかっている20).つまり,現時点において腎臓に関しては異種間では胚盤胞補完法で作成できていないという点.加えて,免疫組織学的検討によりこの腎臓の血管系は,外部iPSCs由来とホストマウス細胞由来のキメラ構造を呈していることが明らかとなっており,実際に人に応用する場合,血管は異種動物の細胞が存在するために異種移植同様の拒絶反応が起こる可能性があるという点.最後に,胚盤胞補完法を用いて作成した動物は,目的臓器だけではなくすべての臓器に外部から注入した幹細胞が分布するため,ヒトとの完全なキメラであるという点がある.つまり,腎臓欠損動物の胚盤胞に対し外部からヒト幹細胞を注入して,仮にヒト幹細胞由来の腎臓がで