カレントテラピー 31-6 サンプル

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Current Therapy 2013 Vol.31 No.6 67625Ⅰ はじめに多能性幹細胞(induced-pluripotent stem cell:iPSCs)樹立による京都大学山中伸弥教授の2012年ノーベル生理学・医学賞受賞に代表されるように,幹細胞および再生医療に関する研究の進歩は目覚ましい.しかしその一方で,日本で透析療法を受ける腎臓病患者は30万人を超えるに至っており,その数はいまだに増加傾向である.本来,腎臓の構成細胞は,ある一定の再生能力をもつとされているが,その再生能力を上回る障害が持続した場合,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)へ進行する.幹細胞や腎臓前駆細胞を中心とした細胞療法による組織修復の報告も散見されるが,末期腎不全(end stagerenal disease:ESRD)患者のように腎構造が完全に破壊されている場合においては,細胞療法では腎機能の回復は期待できない.尿産生能およびエリスロポエチン(erythropoietin:EPO)などのホルモン産生能をもつ腎臓を再生するためには,その構造を丸々再構築しなくてはならない.しかし,腎臓はさまざまな細胞からなる繊細な構造を有する臓器であるため,いくつかの施設では,幹細胞と幹細胞の足場(scaffold)となるものを組み合わせて腎臓を再構築する取り組みが行われている.そのscaffoldには後腎,異種胎仔,胚盤胞といったものがあり,異種動物の腎臓発生過程を利用して腎臓の再生を目指している.その他に,異種動物を用いずに腎臓を再生する試みも行われており,以下に,それらの腎臓再生方法のメリット,デメリット,克服すべき課題について述べる.腎臓の発生と再生医療横手伸也*1・宮崎陽一*2・横尾 隆*3近年,幹細胞および再生分野における研究の進歩は目を見張るものがある.腎臓分野においても間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells:MSCs)や腎臓前駆細胞を中心とした細胞療法による腎臓機能改善の報告がなされているが,その多くは急性腎障害(acute kidney injury:AKI)モデルを用いたものであり,末期腎不全(end stage renal disease:ESRD)に陥った患者に対しては腎臓の構造を再構築する必要がある.しかし,腎臓は複雑な構造をしていることから,もっとも再構築が難しい臓器のひとつといわれている.そのため,いくつかの施設では,異種動物の腎臓発生のメカニズムを利用した腎臓再生の取り組みが行われている.また,異種動物を用いずに,多能性幹細胞(induced-pluripotent stem cells:iPSCs)から段階的に腎臓細胞を構築する試みも行われている.本稿では,主に腎臓の発生メカニズムを利用した腎臓再生に関する取り組みについて概説する.*1 東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科助教*2 東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科講師*3 東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科教授腎臓病の up to date―病態に基づいた治療の最前線