カレントテラピー 31-6 サンプル

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Current Therapy 2013 Vol.31 No.6 45腎臓病の治療の最前線603に優れていたとする報告がある17).一部の臨床試験では,Ca拮抗薬はACE阻害薬と同等の尿タンパク減少効果を有すると報告されており,尿タンパク減少効果,腎保護効果においてCa拮抗薬間の違いが指摘されている18).最近,従来のL型Ca拮抗薬と異なるT型,N型Ca拮抗薬の腎保護作用が報告されている.CARTER試験では,L型Ca拮抗薬のアムロジピンとN型Ca拮抗薬のシルニジピンのタンパク尿減少効果を検討している.その結果,ACE阻害薬を使用しているCKD患者に対し,これらの薬剤を投与した場合,降圧の程度は同等であったが,シルニジピン投与群では尿タンパクのさらなる減少を認め,腎障害合併高血圧の腎保護効果が期待された19).正常タンパク尿(尿タンパク量0.15g/gCr未満)の非糖尿病合併CKDにおいてはRA系阻害薬の明確な優位性は示されておらず,第一選択薬として降圧薬の種類が問われない.したがって,CVDのハイリスク群やⅢ度高血圧(収縮期180mmHg以上または拡張期110mmHg以上の症例)では,第一選択薬として長時間作用型Ca拮抗薬が考慮される.3)利尿薬利尿薬はアルブミンと結合し,尿細管周囲へ運ばれ,そこでアルブミンと離れ,血管から尿細管腔へ分泌され,尿細管腔側から各トランスポーターへ作用する.CKDの進行に伴い,尿細管腔への分泌は有機酸と競合するため,利尿薬の作用は弱まる.しかし,CKDの進行に伴い,ループ利尿薬が作用するNa+K+2Cl-トランスポーターは保たれるのに対し,サイアザイド系利尿薬が作用するNa+Cl-トランスポーターはdown regulationされるため,さらに効果が減弱する.したがって,CKDステージG1~G3ではサイアザイド系利尿薬,G4~G5では長時間作用型ループ利尿薬が第一選択薬となる.食塩感受性の腎症合併高血圧においては,第一選択薬のARBおよびACE阻害薬が併用薬として有用である.利尿薬とARBおよびACE阻害薬は相補的に働くとともに,ARBおよびACE阻害薬でみられる高K血症が利尿薬のもつK排泄作用により軽減される.RA系阻害薬の腎保護効果を示した大規模臨床試験において,大多数の患者で利尿薬が併用されていた.使用時は,低K血症などの電解質異常や脱水に留意する.最近,抗アルドステロン薬が尿タンパクを減少させると報告されているが20),高K血症の危険性があるため慎重投与が必要である.また,利尿薬とβ遮断薬はインスリン感受性を低下させることに留意すべきである.さらに,少量のサイアザイド系利尿薬で通常1mg/dL程度の尿酸値上昇がみられることが多い.4)他の降圧薬β遮断薬,α遮断薬などの他の降圧薬に関しては,腎保護効果を示した臨床研究は少ない.ALLHAT試験によると,α遮断薬は単剤治療の場合,利尿薬,Ca拮抗薬,ACE阻害薬に比較して,一次エンドポイントであるCVD抑制効果は弱い.α遮断薬は糖・脂質代謝改善作用はあるが,臓器保護のエビデンスは明らかでない.そのため,JSH2009ではα遮断薬が推奨される病態はなくなった.β遮断薬の降圧作用はβ1受容体を介するものであり,心臓においては陰性の変時変力作用により心拍出量を減少し,腎臓においてはレニン分泌を抑制する.β遮断薬は虚血性心疾患,うっ血性心不全に対する有用性という点でエビデンスがある.Ⅵ おわりにCKD合併の高血圧患者において,末期腎不全への進行,およびCVD発症の抑制の観点から降圧療法はきわめて重要である.個々の症例に合わせ,適切な降圧薬を選択し,適正な血圧コントロールを達成することが重要である.参考文献1)Yamagata K, Ishida K, Sairenchi T, et al:Risk factors forchronic kidney disease in a community-based population:a10-year follow-up study. Kidney Int 71:159-166, 20072)UK Prospective Diabetes Study Group:Efficacy of atenololand captopril in reducing risk of macrovascular and microvascularcomplications in type 2 diabetes. BMJ 317:713-720,19983)The GISEN Group(Gruppo Italiano di Studi Epidemiologiciin Nefrologia):Randomised placebo-controlled trial of effectof ramipril on decline in glomerular filtration rate and risk of