カレントテラピー 31-6 サンプル

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Current Therapy 2013 Vol.31 No.6 43腎臓病の治療の最前線601は,食塩制限およびタンパク制限が重要である.CKDを伴う高血圧患者では食塩感受性が亢進しており,減塩による降圧効果が期待できる.食塩制限は保存期慢性腎不全では6g/日以下とし,難治性の高血圧や浮腫を合併する例では4~5g/日以下を目標とする.しかし,進行した腎機能障害や高齢者,間質性腎障害では急速な食塩制限は腎機能を悪化させることがあるため注意すべきである.また,タンパク制限により腎不全進展や死亡の相対的リスクが減少することが示されている.CKDステージ3以上では,0.6~0.8g/kg標準体重/日のタンパク制限を行う.タンパク異化を防止するため,30~35kcal/kg標準体重/日のカロリー摂取を指導する.また,喫煙は尿タンパクおよび腎機能低下に悪影響を及ぼすことが,糖尿病性並びに非糖尿病性腎症で報告されている.2 薬物降圧療法適切な薬物降圧療法は,心腎連関の悪循環を断ち切ることになる.また,降圧とともに尿タンパクを減少させることは,腎保護のみならずCVDの発症抑制にもつながる.日本高血圧学会より刊行された『高血圧治療ガイドライン2004年度版』では,腎疾患を合併する高血圧の降圧目標を130/80mmHg未満としている.さらにMDRD研究では,尿タンパク量が1g/日以上ではより低い125/75mmHg未満を目標にすべきとされ13),『高血圧治療ガイドライン2009』(JSH2009)でも同様であった.降圧治療においては,これまで“the lower, thebetter”の考え方があった.確かに,130/80mmHg程度までは直線的に降圧に応じた腎機能保持効果が得られることが示されていたが,CVD高リスク患者における近年の介入研究のサブ解析では収縮期血圧130mmHg近辺で最もCVDの発症リスクが低いという成績が得られている.さらに新しいACCORD試験や,メタアナリシスの成績から厳格降圧群と標準降圧群とで複合エンドポイントに有意差が得られず,むしろ厳格降圧群で低血圧や腎不全の進行などの重大な副作用が多いとの結果であった.これらの成績を踏まえ,『CKD診療ガイド2012』では,CKD患者の降圧目標を新たに決定した.CKD患者の新しい血圧の管理目標は130/80mmHg以下であり,従来の130/80mmHg未満,尿タンパク1g/日以上で125/75mmHg未満よりも緩和された.また,高齢者の過剰降圧による低血圧,さらには臓器障害から急性腎障害に至った症例が多数報告されたため,高齢者の降圧治療については特に注意喚起され,140/90mmHgを目標に降圧し,腎機能悪化や臓器障害がみられないことを確認し,130/80mmHg以下に慎重に降圧することを推奨している.また,過剰降圧とならないように,薬剤を使用した収縮期血圧の110mmHg未満への降圧を避けることが記載されている.従来のCKD治療はすべてACE阻害薬,ARBを第一選択薬としてきたが,今回の改訂では,糖尿病患者およびタンパク尿0.15g/日以上(アルブミン尿30mg/日以上)のタンパク尿を有する患者において,第一選択の降圧薬はACE阻害薬とARBとした.しかし,尿タンパクが0.15g/日未満の非糖尿病患者には,降圧薬の種類を問わないとした.さらに,季節による血圧の変動や,血圧日内変動を考慮して,家庭血圧や24時間血圧を参考に治療することが望ましいとされた.一日2回など複数回服用による血圧安定,および眠前に降圧薬を服薬することで,CVDの発症を抑制できるという報告があることが記載された.降圧目標を達成するために降圧薬の追加が必要な場合はCa拮抗薬,利尿薬を中心に個々の症例に合わせ追加すべきである(図).1)RA系阻害薬ARB,ACE阻害薬を開始,増量,追加する場合には,1~2週間程度腎機能,血清カリウム(K)の推移を観察し,急激な悪化がないことを確かめ降圧目標を目指す.AASK研究14)では,ARBやACE阻害薬が腎保護作用を有し尿タンパク量を減少させたのに対し,Ca拮抗薬では同程度に血圧を低下させたにもかかわらず,腎機能を変えないかむしろ悪化させる可能性を示す結果となった.REIN -2研究において,RA系阻害薬とCa拮抗薬の併用は,血圧を130/80mmHgまで低下させてもRA系阻害薬単独群に比較しむしろ腎保護に働かなかった15).腎機能障害合併高血圧患者において,Ca拮抗薬の腎保護作