カレントテラピー 31-6 サンプル

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Current Therapy 2013 Vol.31 No.6 41599であると同時に3),最近,これらは心血管疾患(cardiovasculardisease:CVD)の重要な危険因子であることが明らかにされた4), 5).尿タンパクは糸球体や血管の障害の指標となるだけでなく,尿タンパク自体が腎機能を悪化させると考えられている.さらに,尿アルブミン量の減少がCVDの減少に強い相関をもつことが示された.CKDにおけるCVDの発症や死亡率が,末期腎不全発症の数倍~数十倍にもなると報告されている6).CKDにおける高血圧に対する早期治療介入は,CKDの進行抑制とともにCVD発症抑止にもきわめて重要である.心腎連関とそのメカニズムについてはいまだ不明な点が多い.片側の慢性および急性腎虚血において,遠く離れた心臓組織に炎症性ケモカインが誘導され,炎症細胞の浸潤がみられたとする報告もあるが7),心腎連関のメカニズムについてさらなる検討が必要である.Ⅲ CKDの原因疾患高血圧はその原因により,本態性高血圧と二次性高血圧に分類できる.二次性高血圧のなかでは腎性高血圧が最も多く,慢性糸球体腎炎や糖尿病性腎症などの腎疾患による腎実質性高血圧と,腎動脈の狭窄による腎血管性高血圧などがある.高血圧治療の進歩により脳卒中や心臓病の発症および死亡率は減少してきたが,末期腎不全の発症は増加の一途をたどっている.2006年,新規透析導入患者35,192人の原因疾患は,1位糖尿病性腎症(42.9%),2位慢性糸球体腎炎(25.6%),3位腎硬化症(9.4%),4位多発性のう胞腎(2.4%)となっている.これらCKDの多くは高血圧を発症し,その高血圧は腎障害を進行させ悪循環を形成している1).1 腎実質性腎障害(糸球体腎炎,糖尿病性腎症など)本態性高血圧症では,全身血圧が上昇するとき,輸入細動脈が収縮するため糸球体血圧は正常レベルのまま一定に維持するよう調節される.これに対し,糖尿病性腎症,虚血性腎症を含む各種腎疾患において糸球体過剰濾過がみられ,輸入細動脈の拡張,輸出細動脈の収縮が観察される8).糸球体内圧の上昇は糸球体細胞外基質の増加,硬化病変への進展を引き起こし,残存糸球体が障害され,さらなる腎機能の悪化がみられる.レニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬は,輸入細動脈に比較し輸出細動脈を拡張させるため,全身血圧とともに糸球体血圧を低下させ,さらに輸出細動脈を拡張させることで尿細管周囲の虚血を解除することとなり,腎保護に働く.一方,従来のL型カルシウム(Ca)拮抗薬は輸入細動脈を優位に拡張させることから,糸球体内圧を低下させるためには全身血圧を低下させる必要がある.最近,輸出細動脈を優位に拡張させるT型,あるいはN型Ca拮抗薬の腎保護作用が報告されている9).2 間質性腎疾患(慢性腎盂腎炎,多発性のう胞腎など)一般に糸球体血圧は正常から低値を示し,尿タンパク量は少ない.尿タンパクを伴わないCKDに対するRA系阻害薬の腎保護作用は確立されていない.降圧薬の選択はRA系阻害薬にこだわらないが,尿タンパク量が増加してくる場合は,糸球体腎疾患と同様にRA系阻害薬を中心に130/80mmHg以下の降圧を目指す.3 腎血管性高血圧高齢化および動脈硬化症の増加に伴い,近年,末期腎不全の大きな原因として考えられるようになった.腎の灌流圧が低下し,虚血側腎の傍糸球体細胞よりレニンが過剰に分泌されて腎血管性高血圧症が発症する.片側性腎動脈狭窄の場合,レニン依存性高血圧が持続し,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬などにより降圧が得られることが多い.一方,狭窄病変が両側腎動脈にある場合,あるいは単腎における腎動脈狭窄では,末梢血中のレニン活性は必ずしも高値ではないが,アンジオテンシンⅡが選択的に輸出細動脈を収縮させ,糸球体内圧が上昇し,糸球体濾過機能が維持されている.このとき,ACE阻害薬,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)などによりRA系を阻害すると,輸入細動脈に比して輸出細動脈が拡張し糸球体内圧が減少する.