カレントテラピー 31-5 サンプル

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8 Current Therapy 2013 Vol.31 No.5462Ⅰ はじめに慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonarydisease:COPD)ではエラスチンの破壊による肺胞領域の気腫性病変とコラーゲン増生による細気管支の線維性狭窄が気流閉塞と肺の過膨張(エアトラッピング)の原因になる.しかし,これらは肺胞と細気管支領域のそれぞれに限局して生じるわけではない.気腫化した肺胞壁ではエラスチンの破壊とともにコラーゲンの増生がみられる1).一方,細気管支においてはコラーゲンの増生とともにエラスチンの破壊がみられ,肺胞と同じく細気管支が消失した所見も認められる2).したがって肺胞壁ではエラスチンの破壊,細気管支壁ではコラーゲンの増生がCOPDの主な病理変化であるが,両者の病変形成の機序には共通点がある.本稿ではCOPDの病態形成過程を理解するために,①なにがCOPDを起こすのか,②なぜCOPDは高齢者に起きるのか,③どのような機序でCOPDが起きるのか,④なぜCOPDは慢性化するのか,について解説する.Ⅱ なにがCOPDを起こすのかCOPDの原因物質は特定されていないが,たばこ煙が最大の危険因子であることに異論はない.現時点では,たばこ葉やバイオマスなどの不完全燃焼により生じた微小粒子状物質〔微粒子(fine particulatematter),超微粒子(ultrafine particulate matter)〕の長期間にわたる吸入がCOPDの主な原因であると考えられている.たばこ煙は,たばこ葉が完全燃焼COPDの病因論青柴和徹*1・辻 隆夫*2慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)では多量のオキシダントを含むたばこ煙の微粒子を気道や肺に吸入することでdanger signalによるインフラマソーム(inflammasome)の活性化とインターロイキン(IL)-1βの産生が引き起こされて炎症が生じる.その結果,肺胞領域では好中球とマクロファージから産生されたエラスターゼが肺胞壁を破壊して気腫病変を形成する.気腫病変の進行性拡大には呼吸運動に伴う機械的ストレスの負荷も関与している.一方,気道壁ではエラスチンの破壊も生じるが,修復機転としてのコラーゲン産生が過剰に起こり気道の線維性狭窄が生じる.禁煙後もCOPDの炎症は持続するが,その機序にはDNA障害による細胞老化の役割が指摘されている.COPDは加齢の影響下に発症するが,その理由は高齢者に発現するCOPDの疾患責任遺伝子が進化的に自然淘汰されにくいためと考えられる.*1 東京医科大学茨城医療センター呼吸器内科教授*2 東京医科大学茨城医療センター呼吸器内科講師COPD―その病態と最新治療