カレントテラピー 31-5 サンプル

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Current Therapy 2013 Vol.31 No.5 87Key words541COPDと肺癌自治医科大学内科学講座呼吸器内科学部門准教授 坂東政司1 はじめに慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructivepulmonary disease:COPD)は肺癌の危険因子のひとつである.一方,肺癌はCOPDの肺合併症のひとつで,わが国の『COPD診断と治療のためのガイドライン第3版』では,「肺癌は, 呼吸不全や心・血管疾患とともにCOPD患者の死因となる可能性があり,その対策が重要である」と記載されている.2 COPD合併肺癌の疫学COPDにおける肺癌合併頻度は9~20%で,肺癌合併リスクはCOPD非合併喫煙者の3~4倍である.COPDにおける肺癌発症率は年間1,000人あたり0.64~4.2人程度と考えられているが,最近では16.7人との報告もある.また,肺癌はCOPDの死因の5~38%を占め,特に気流閉塞が軽度のCOPDでは死因の約33%を占めているとの報告もあり,GOLD 2011年改訂版において,『Lung cancer:frequentin patients with COPD;the most frequentcause of death in patients with mild COPD』と記載されている.一方,肺癌にCOPDが合併する頻度は65歳以上の高齢者では約30%で,65歳未満では約20%である.また,COPD合併肺癌は扁平上皮癌が多いとの報告があるが,一定の傾向を認めないとする報告もある.3 COPD合併肺癌の発症機序たばこ煙はCOPDおよび肺癌に共通した危険因子であるが,現在ではCOPDが喫煙とは独立した肺癌発症の危険因子と考えられている.最近の研究では,COPDに伴う全身性および肺局所での慢性炎症,酸化ストレスによるサイトカイン・活性酸素種を介した組織修復の阻害や血管新生促進,上皮増殖因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)の発現亢進により起こる上皮増殖促進などによる肺癌の増殖メカニズムが報告されている.4 COPD合併肺癌の早期診断COPD合併肺癌の多くは肺癌診断時に初めてCOPDの存在も指摘される場合が多いのが現状である.COPD合併肺癌の早期発見・早期治療にはCOPD自体を早期に発見することがきわめて重要である.また早期発見の対策としては,検診時に質問票からCOPDの疑い患者を抽出し,その後肺機能検査とCTでCOPD患者を絞り込み,そのデータベース化によりフォローアップを行う肺癌検診体制が注目されている.5 COPD合併肺癌の治療高齢,低肺機能,心・血管疾患の合併,および低栄養などによる全身状態不良のため治療選択に苦慮することが多く,その治療戦略においては肺癌の病期のみならず,年齢,全身状態,合併症などの個人差を考慮した治療方針の決定が重要である.また外科療法においては,COPD非合併例と比較して術後合併症の発症率が高く,IA期のみを対象とした外科療法においてもCOPDが独立した予後不良因子であるとの報告もある.1秒量(術後予測値800 mL以上)のみならず自覚症状や肺拡散能,運動負荷試験,心機能検査などの結果を総合的に評価することが重要である.一方,化学療法ではCOPD非合併例と同様な薬剤を用いるが,全身状態に応じて薬剤選択や投与量調節が必要である.また,COPD合