カレントテラピー 31-5 サンプル page 13/28
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カレントテラピー 31-5 サンプル
Current Therapy 2013 Vol.31 No.5 43COPDの最新治療497る.例えば歯周病菌に対する抗体価が低い患者群では,頻回に増悪をきたすことが報告されている14).頻回増悪をきたす原因ならびにそのメカニズムの解明と並行し,このような患者群に対する増悪予防のための介入を積極的に行うことで,大きなリスク抑制につながることが期待されている.今後,COPDの患者が増加することが予測されることも踏まえると,このようなリスク評価に基づいた介入は,将来的な医療費の抑制につながると考えられる.さらに,今後の治療の展開として期待されるのは根本治療といえる抗炎症治療である.COPDにおける気道炎症は上皮細胞,好中球,マクロファージを中心にTNF -αやIL -8などのサイトカイン,プロテアーゼ産生などを介して最終的に末梢気道閉塞と肺胞破壊が生じる.これらの炎症は多くは気管支喘息と異なりステロイド不応性とされ,これまで抗炎症治療を困難にしてきた.近年,炎症メカニズムの解明とともにそれらに対し特異的な治療薬の開発が進められている.例としてホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤などのシグナル伝達阻害剤,IL -8受容体CXCR2阻害剤などのケモカイン阻害剤,抗酸化薬,プロテアーゼ阻害剤が挙げられる.特にPDE4阻害剤は,気道上皮,樹状細胞,好酸球,マクロファージ,好中球など種々の細胞に発現するPDE4を阻害し,サイトカイン産生抑制や細胞増殖抑制などの効果を発現するとされる.例えばroflumilastは臨床的に増悪抑制効果や一秒量(FEV1)改善効果が示されている16).2011年に米国食品医薬品局(FDA)で承認を得ており,本邦での第Ⅲ相試験も終了し,今後の導入が期待されている.もうひとつの根本治療としては幹細胞治療,再生医療に大きな期待が寄せられている.幹細胞治療については,間葉系幹細胞の経静脈的投与を行うCOPD患者を対象とした二重盲検比較試験17)では肺機能やQOLの有意な改善はなかったものの,早期にC反応性タンパク(CRP)の低下がみられ,抗炎症治療としての今後の展開が注目される.また,iPS細胞研究の進歩によるCOPD病態の一層の解明,ひいては特異的な治療法の開発,さらに,現在のところ実用化には至っていないものの,臓器再生の実現に大いに期待したい.Ⅴ おわりに現在,COPDの治療に際しては呼吸機能の改善のみならず症状改善,リスク低減の視点が重要とされており,長時間作用型吸入気管支拡張薬を中心とした薬物加療,併存症の診断加療が重要であると考えられている.症状や併存症,自然歴といったCOPDの臨床的な病態の理解とCOPDにおいてみられている炎症機構の解明が進んでおり,今後の管理や治療のコンセプトは大きく変化する可能性があると考えられる.参考文献1)Global Strategy for the Diagnosis, Management and Preventionof COPD, Global Initiative for Chronic Obstructive LungDisease(GOLD)2011. (Available from:http://www.goldcopd.org/)2)日本呼吸器学会COPDガイドライン第3版作成委員会:COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第3版.メディカルレビュー社, 東京, 20093)O’Donnell DE, Fluge T, Gerken F, et al:Effects of tiotropiumon lung hyperinflation, dyspnoea and exercise tolerance inCOPD. Eur Respir J 23:832-840, 20044)Calverley PM, Anderson JA, Celli B, et al;TORCHinvestigators:Salmeterol and Fluticasone Propionate andSurvival in Chronic Obstructive Pulmonary Disease. N EnglJ Med 356:775-789, 20075)T a s h k i n D P , C e l l i B , S e n n S , e t a l;U P L I F T S t u d yInvestigators:A 4-year trial of tiotropium in chronic obstructivepulmonary disease. N Engl J Med 359:1543-1554, 20086)Halpin DM, Decramer M, Celli B, et al:Exacerbation frequencyand course of COPD. Int J Chron Obstruct PulmonDis 7:653-661, 20127)Donohue JF, van Noord JA, Bateman ED, et al:A 6-month,placebo-controlled study comparing lung function and healthstatus changes in COPD patients treated with tiotropium orsalmeterol. Chest 122:47-55, 20028)Buhl R, Dunn LJ, Disdier C, et al;INTENSITY study investigators:Blinded 12-week comparison of once -daily indacateroland tiotropium in COPD. Eur Respir J(Suppl) 38:797-803, 20119)Ionescu AA, Schoon E:Osteoporosis in chronic obstructivepulmonary disease. Eur Respir J 46:64s-75s, 200310)Kiyokawa H, Muro S, Oguma T, et al:Impact of COPD exacerbationson osteoporosis assessed by chest CT scan. COPD9:235-242, 201211)Casanova C, Baudet JS, del Valle Velasco M, et al:Increasedgastro-oesophageal reflux disease in patients with severe