カレントテラピー 31-4 サンプル

カレントテラピー 31-4 サンプル page 4/30

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心不全の診断と治療の現状―最近のガイドラインの把握と臨床判断―企画公益財団法人日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院院長友池仁暢心不全の多面性心不全の診断と治療の標準化が急速に進んでいる.医療における....

心不全の診断と治療の現状―最近のガイドラインの把握と臨床判断―企画公益財団法人日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院院長友池仁暢心不全の多面性心不全の診断と治療の標準化が急速に進んでいる.医療における標準化が進む背景は,理念というよりICD -10を基本のひとつに取り入れたDiagnosis Procedure Combination/Per -DiemPayment System(DPC/PDPS)準拠病院が拡大したことや,専門学会が策定するガイドライン群の充実が大きく与っていると思われる.特に後者は,診断や治療のエビデンスを集め,その質や信頼性を評価して体系化したものである.診療における課題の選別に始まるガイドライン構築の厳密で時間のかかる作業は,取りも直さず標準とはなにかを求めることでもある.日本のガイドラインが海外のガイドラインを下敷にしてつくられてきたが,内容に大きな違和感がなかったのは標準化がグローバリゼーションと相同の帰着点であったからだと考えられる.日本循環器学会は,おそらく国内のどの専門分科会よりも,数多くのガイドライン群を策定・公開している.そのなかで最も頻繁に取り上げられてきた項目は「心不全」である.このことは「心不全」が循環器疾患の診断や治療の標準化における要になる病態であることを意味している.そこで本特集は日本循環器学会が公開している各ガイドラインについて,「心不全がそれぞれの病態でどのように診療されているのか」を,各ガイドライン策定に中心的役割を果たされている専門医にその総括をお願いした.医療の先進地域とされてきた欧州や北米の大規模な学会に参加すると,「心不全」が大きく取り上げられており,行政・施策の大きな課題になっていることもうかがえる.翻って,わが国での「心不全」の位置づけは欧米ほどには重きが置かれていないように見受けられる.これは憶測になるが,過去において,心不全が死亡診断名に頻繁に使われたため,死因の直接的原因はなんであるかを突き詰められなかったという反省が尾を引いていて,わが国の医療の仕組みのなかに「心不全」をどう位置づけるか慎重になっているのかもしれない.世界保健機関(WHO)は世界の公衆衛生対策を感染症から非感染性疾患(non-communicabledisease:NCD)に軸足を移した.NCDの対象疾患はがん,糖尿病,高血圧と並んで心不全が取り上げられている.2008年のWHO統計によると,全世界の死亡数5,700万人のうち3,600万人(63%)は心血管病だとしている.わが国は人口構成の高齢化が急ピッチで進んでいるため,世界のなかで心不全が社会問題化するのは最も早いのではないかと思われる.自覚症状と臨床徴候をベースとした病態病名である「心不全」は,救急救命の最前線病院ではすでに最も患者数の多い疾患になりつつある.このような実情を背景にした本特集から,多種の循環器疾患のなかで「心不全」の位置づけと特徴を知っていただき,ガイドラインを複眼的に読んでいただき,「群盲象をなでる」ことなく実効ある診療になることを期待してやまない.Current Therapy 2013 Vol.31 No.43557