カレントテラピー 31-4 サンプル page 24/30
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心不全の診断と治療の現状―最近のガイドラインの把握と臨床判断植込型補助人工心臓:日本の現状と将来展望東京大学重症心不全治療開発講座特任教授/東京都健康長寿医療センター副院長許俊鋭1960年代に心臓移植代替....
心不全の診断と治療の現状―最近のガイドラインの把握と臨床判断植込型補助人工心臓:日本の現状と将来展望東京大学重症心不全治療開発講座特任教授/東京都健康長寿医療センター副院長許俊鋭1960年代に心臓移植代替治療(destinationtherapy:DT)の確立を目指して人工心臓プロジェクトが米国でスタートした.当初,自然心を同所的に置き換える完全置換型(total artificial heart:TAH)・完全埋込み型(fully implantable)人工心臓の完成を目指していた.1982年に空気駆動型TAHであるJarvik 7の臨床が始まり,2001年に完全埋込み型のAbioCorが完成した.しかし,長期耐久性の問題からAbioCorの臨床試験は現在中断しており,TAHは長期耐久性においていまだ完成の域に達していない.一方,1980年代にシクロスポリンAが臨床導入され,欧米では心臓移植が飛躍的に増加した.それとともにドナー心不足が進行し,人工心臓による心臓移植へのブリッジ(bridge to transplantation:BTT)の必要性が高まった.そのなかで,BTTデバイスとしての植込型左心補助人工心臓(left ventricular assist device:LVAD)の開発が進み,1990年代はNovacorLVADやHeartMate LVAD(IP,VE,XVE)などの第一世代拍動流植込型LVADが臨床導入され活躍した.心臓移植非適応症例に対しても,内科治療と第一世代拍動流植込型LVAD治療の無作為前向き臨床試験であるREMATCH studyの結果が2001年に報告された.HeartMate VE LVADが末期心不全に対するDTデバイスとして有用であることが証明されたため,2002年に米国食品医薬品局(FDA)により承認され保険償還された.21世紀は植込型LVADによる「DTの夜明け」といってもよい.第一世代植込型LVADはサイズが大きく長期耐久性・抗血栓性に難があったため,2000年代に入り第二・第三世代の小型定常流植込型LVAD(HeartMateⅡ,Jarvik2000,DuraHeart,EVAHEARTなど)が臨床導入された.HeartMateⅡはFDAにより2008年にBTT適応が承認され,2010年にDT適応が承認された.その結果,第一世代植込型LVADは市場から消え去り,欧米ではHeartMateⅡが飛躍的な発展普及をみた.2008年の米国市場ではHeartMate LVADの出荷数が心臓移植数を上回り,2010年の出荷数は3,000個を上回った.一方,日本市場では2011年にようやくEVAHEARTとDura-Heartが保険償還され,世界に20年遅れて植込型LVADによるBTT治療が緒についた.また,DTにおいても日本はすでに欧米から10年遅れている.これまで20年間,植込型LVADがBTTデバイスとして欧米で飛躍的発展を遂げてきたがゆえに,現在日本では植込型LVADはBTTデバイスとする概念が一般化している.しかし,日本でも植込型LVADの新しい時代を切り開く時期にきたようだ.植込型LVAD治療の10年生存率が心臓移植治療を上回れば,日本でも若年者を除いて植込型LVADが心臓移植適応の有無にかかわらず重症心不全の標準治療となる日がくることも夢ではない.88Current Therapy 2013 Vol.31 No.4436