カレントテラピー 31-4 サンプル page 12/30
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概要:
め,無作為化二重盲検比較対照試験である「MAGICtrial」は,各群の被験者全員に植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator:ICD)を装着して行われたが,心機能の有意な改善はみられなかった2).一....
め,無作為化二重盲検比較対照試験である「MAGICtrial」は,各群の被験者全員に植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator:ICD)を装着して行われたが,心機能の有意な改善はみられなかった2).一方,本邦では細胞シート工学技術により,骨格筋芽細胞シートを用いた拡張型心筋症(dilatedcardiomyopathy:DCM)に対する治療が試みられている3).移植には開胸手術を要するが,新たな治療法となる可能性がある.Ⅲ骨髄・末梢血造血幹細胞,内皮前駆細胞骨髄のc -kit陽性細胞による心筋梗塞治療研究に端を発し,骨髄・末梢血・臍帯血中の造血幹細胞や内皮前駆細胞による臨床的心臓再生は2002年に始まった4),5).2006年ころからは,100名以上の被験者6を擁する臨床試験の結果)が各国より報告されている.これらの細胞は,骨格筋芽細胞とは異なり培養工程が不要で,急性期治療も可能である.骨髄由来細胞を用いた急性・慢性虚血性心不全に対する臨床試験のメタ解析によると,無作為化比較対照試験では36 trialで996症例,コホート試験では14 trialで464症例,合計1,460例が細胞治療群として(対照群は合計1,165例),中央値で1億個(200万個から600億個)の自家細胞移植を受け,約6カ月の観察期間において,左室駆出率(left ventricular ejection fraction:LVEF)が3.96%改善した(95%CI 2.90~5.02%)7).各試験結果の差異が大きく,どの細胞分画が再生に寄与しているか不明という批判や,効果の持続性を疑問視する声はあるが,多くの試験で心機能が改善し,メタ解析では対照群に比して総死亡や心筋梗塞の再発が減少した7).また,心室性不整脈などの有害事象の有意な増加も認めなかった.各試験のプロトコールの違いも考慮されるべきだが,サブ解析によると,治療前のLVEFが43%未満の患者のほうが,それを上回る患者よりも治療効果が高く,また,有用な効果を得るには4,000万個以上の細胞が必要であると示唆された7).メタ解析に使われた個々の試験は症例数が限られ,観察期間などのプロトコールも多様であり,多くはエンドポイントとして総死亡を設定していない.これに対し第Ⅲ相臨床試験として,「BAMI trial」が2012年よりEU諸国で開始された.これは,自家骨髄単核球細胞の冠動脈内注入による急性心筋梗塞治療が,患者の総死亡と心機能に与える影響を調べる無作為化非盲検比較対照試験であり,3,000症例を3年間フォローする計画で,2017年初頭の完了が見込まれている.一方,骨髄細胞を用いた非虚血性心不全に対する臨床試験もいくつか行われており,心機能の改善が認められている8),9).Ⅳ骨髄間葉系細胞,脂肪組織由来細胞間葉系細胞は筋肉のほか,歯,脂肪,軟骨などさまざまな細胞へ分化する能力をもち,培養皿に接着して増殖する性質を利用して単離できる.骨髄間葉系細胞は心筋細胞や血管内皮細胞へ分化することが示され,本細胞による心筋梗塞治療は2004年から始まり,急性・慢性虚血性心不全に対する多くの臨床試験が進行中である.現在のところ,少なくとも短期的には重篤な有害事象の増加はなく,自覚症状や心機能の改善傾向がみられている10).一方,骨髄間葉系細胞は主要組織適合抗原複合体(major histocompatibility complex:MHC)クラスⅡを発現しておらず,免疫学的拒絶を受けにくい特徴がある.この性質を利用して他家移植が可能となれば,治療に適した細胞を保存しておくことで,誰にでも使える利点がある.Hareらは,急性心筋梗塞に対する他者由来の骨髄間葉系細胞の静脈内投与が,対照群と比べて心機能を改善させ不整脈の発生も減少させることを見出した.続いて虚血性心不全患者に対して,2,000万~2億個の骨髄間葉系細胞の経カテーテル的な心内膜下への自家移植と他家移植とが,同程度に心機能を改善させることを示し11),他家移植への期待が高まった.ただし,他家移植された骨髄間葉系細胞が生体内で分化すると,抗原性を獲得して免疫系によって排除されるという指摘もCurrent Therapy 2013 Vol.31 No.440759