カレントテラピー 31-3サンプル

カレントテラピー 31-3サンプル page 7/30

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動脈に,頸動脈では内・外頸動脈の分岐部,サイフォン部に好発する.頭蓋内動脈の硬化巣は冠動脈病変に比べて進展が遅く,線維性のプラークが多い.これは血管周囲を取り巻く結合組織がなく,炎症性反応が生じにくい....

動脈に,頸動脈では内・外頸動脈の分岐部,サイフォン部に好発する.頭蓋内動脈の硬化巣は冠動脈病変に比べて進展が遅く,線維性のプラークが多い.これは血管周囲を取り巻く結合組織がなく,炎症性反応が生じにくいためと解釈している.頸動脈に関しては,内膜剥離術にて得られた標本を用いて臨床病理学的検討がなされているが,症状と粥状動脈硬化巣の病変に関して一定の見解は得られていない.われわれの検討でも,無症候性の症例において,プラーク破綻や血栓形成を約40%に認め,無症候性のプラーク破綻が一般的に考えられているよりも多く存在する可能性がある.頸動脈プラークの破綻と血栓形成が,脳梗塞の発症に重要であることは疑いないが,プラーク破綻が必ずしも脳梗塞を発症するとは限らず,循環障害を引き起こすような大きな血栓が形成されることが重要であると考えられる.脳梗塞における血管や血栓の性状は,適切な治療や予防を行ううえで重要な情報である.筆者らは脳梗塞における血管と血栓の性状を明らかにするために,発症から30日以内のアテローム性脳梗塞と心原性脳梗塞の剖検症例(17例)を検討した6).アテローム血栓症は,心原性血栓塞栓症と比べて血管狭窄が高度で,80%に進行性動脈硬化症を認めた.一方,心原性血栓塞栓は,アテローム血栓の約3倍の大きさであった.いずれの血栓も,血小板,フィブリンと赤血球から構成されていたが,赤血球の割合は心原性血栓塞栓で大きく,フィブリンの割合はアテローム血栓で大きかった.この結果から,いずれの血栓にも血小板と凝固系が関与しており,心原性血栓塞栓においては心房内の血流状況により赤血球の割合が増加したものと考えられた.ラクナ梗塞は細動脈硬化症に陥った血管の血栓性閉塞により生じると考えられているが,急性期に死亡することはきわめてまれであり,器質化した病変を認めるのが一般的である.Ⅳ無症候性動脈血栓プラーク破綻がイベント発症の引き金となるが,必ずしも閉塞性血栓が形成されるわけではない.心血管イベントの既往や症状のなかった剖検症例(102例)において,そのうち10人(9.8%)に冠動脈アテローム血栓を認めた.そのアテローム血栓は血小板とフィブリンからなるが,心筋梗塞症例のアテローム血栓と比べて有意に小さく,プラークびらんの頻度が高かった.また血栓の付着したプラークの脂質コアは小さく,線維性被膜は有意に厚かった7).これらの結果は,1プラーク破綻(破裂,びらん)が必ずしもイベント発症に至るわけではないこと,2血栓の大きさが発症に重要であること,3プラークの性状や破綻の程度が血栓の大きさに関与すること,を示唆している.なお,無症候性の動脈血栓の70%がプラークびらんであり7),びらん性内膜傷害は動脈血栓の一般的な発生機序である可能性が考えられる.この病理学的所見からプラーク破綻後の血栓の成長がイベント発症を決定すると考え,「血栓の成長=血栓症」という認識で,アテローム血栓症における血栓の成長機序を検討した.Ⅴアテローム血栓の成長機序健常動脈と動脈硬化血管の大きな違いは,プラークにおける豊富なTFの存在であり,TFがアテローム血栓の成長に重要な役割を果たしていると考えられる.一方,アテローム血栓症患者では血液中のTFが増加していることが報告されているが8),血管壁のTFと血液中のTFのどちらが血栓の成長に関与しているかは明確ではなく,健常血管の血栓モデルを用いた基礎研究においても統一した見解は得られていない.これを踏まえて,筆者らはヒトのアテローム血栓症に類似した家兎動脈硬化性血栓モデルを確立し9),プラーク由来のTFがアテローム血栓の形成に重要であること10),血小板膜上でのトロンビン産生の増幅に重要である血液凝固第?因子がアテローム血栓の成長に関与することを報告した11).以上の結果より,アテローム血栓症における過剰な血小板凝集とフィブリン産生にTF経路からのトロンビン10Current Therapy 2013 Vol.31 No.3248