カレントテラピー 31-3サンプル

カレントテラピー 31-3サンプル page 6/30

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プラーク破裂*500μm100μm100μmプラークびらん*500μm100μm100μmHEGPⅡb/Ⅲaフィブリン図1プラーク破裂とプラークびらんに伴うヒト冠動脈アテローム血栓プラーク破裂(上段),線維性被膜が破裂し,脂質コアが....

プラーク破裂*500μm100μm100μmプラークびらん*500μm100μm100μmHEGPⅡb/Ⅲaフィブリン図1プラーク破裂とプラークびらんに伴うヒト冠動脈アテローム血栓プラーク破裂(上段),線維性被膜が破裂し,脂質コアが血管内腔と連続して血栓(*)が形成されている.プラークびらん(下段)平滑筋細胞と細胞外基質からなるプラークに浅い傷害(びらん)が観察され,壁在血栓(*)を伴っている.いずれの血栓も血小板とフィブリンからなる.HE:ヘマトキシリンエオジン染色,GP:糖タンパク〔参考文献5)より引用改変〕動脈血栓は血小板とともに多量のフィブリンや赤血球からなり,多数の好中球も含んでいる1),2).血小板とフィブリンは冠動脈血栓の普遍的要素であり,アテローム血栓症の発症には血小板の凝集と血液凝固反応が連動していると考えられる.プラーク内にはコラーゲンなどの細胞外基質に加えて,通常の内膜では発現しない組織因子(tissue factor:TF,血液凝固の開始因子)が豊富に含まれている.プラーク内のマクロファージや平滑筋細胞がTFを発現し,その活性は粥状動脈硬化の進行と関連することより3),TFの存在がフィブリンを多く含む血栓の形成に強く関与していると考えられる.血栓中の単核球のなかにはCD34陽性細胞が含まれており,血栓表面の内皮化による抗血栓性の獲得やその後の器質化に関与しているとされている.興味深いことに,2型糖尿病症例の冠動脈血栓ではCD34陽性細胞が少なく,血栓の内皮化の遅延や抗血栓性の低下が示唆された4).アテローム血栓症の誘因となるプラーク破綻には,線維性被膜が断裂して,プラーク内の脂質コア成分が血液と直接接触するプラーク破裂と,平滑筋細胞に富むプラークの表在性傷害であるプラークびらんがある(図1).筆者らの病理解剖症例の検討では,冠動脈アテローム血栓による突然死の約4/5がプラーク破裂,約1/5がプラークびらんに起因していた5).プラーク破裂・びらんに伴う血栓は,いずれも血小板とフィブリンからなるが,興味深いことに,血小板とフィブリンの比率は両者で異なっており,プラーク破裂に伴う血栓では血小板よりもフィブリンの占める割合が高く,血栓サイズも大きいことが多い.一方,プラークびらんに伴う血栓では,基部はフィブリンの析出が著明であるのに対して,内腔側では血小板の占める割合がやや高い傾向にあった5).この結果から,プラーク破綻部における血栓形成では,破綻病変の性状によって血小板と血液凝固系の血栓形成への関与の度合いに差があることが推察された.しかしながら,血栓の質や大きさを規定する血管性因子は明確になっていない.Ⅲ脳梗塞の血管と血栓の病理脳梗塞はアテローム血栓症,心原性血栓塞栓症,および脳実質内の細動脈硬化に伴うラクナ梗塞からなる.アテローム性脳梗塞は頭蓋内や頸部の主幹動脈の粥状動脈硬化巣を基盤とした,血栓症,血栓塞栓症,狭窄による虚血によって発症するとされている.動脈硬化は中大脳動脈水平部,脳底動脈,椎骨Current Therapy 2013 Vol.31 No.32479