カレントテラピー 31-3サンプル

カレントテラピー 31-3サンプル page 25/30

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Key wordsCLEC-2とポドプラニン山梨大学大学院医学工学総合研究部臨床検査医学講座准教授井上克枝C -type lectin-like receptor 2(CLEC-2)は血小板を活性化する蛇毒タンパクであるロドサイチンの受容体として,血....

Key wordsCLEC-2とポドプラニン山梨大学大学院医学工学総合研究部臨床検査医学講座准教授井上克枝C -type lectin-like receptor 2(CLEC-2)は血小板を活性化する蛇毒タンパクであるロドサイチンの受容体として,血小板上に同定された.その翌年,CLEC -2の生体内リガンドが,ポドプラニンというある種の癌細胞などに発現する膜タンパクであることが報告されてからCLEC -2の生体内での役割の解明が急速に進み,現在ではCLEC -2は,1癌細胞のポドプラニンと結合して癌の血行性転移を促進する,2胎生期にリンパ管内皮のポドプラニンと結合して,リンパ管と血管の分離を促進する,3流血中で血栓を安定化する,あるいは動脈硬化巣のポドプラニンと結合して病的血栓形成に関与する,と考えられている.近年では,ポドプラニンとCLEC -2の結合を抑制すると,ポドプラニン発現腫瘍の血行性転移が抑制されることがマウス肺転移モデルで証明され,CLEC -2・ポドプラニンは抗転移薬のターゲットタンパクとなり得ると考えられている.4つのグループによりほぼ同時期に作製されたCLEC -2欠損マウスは,胎生期や出生後早期に死亡した.CLEC -2欠損胎仔には,リンパ管と血管の分離不全のため,血液が流入したリンパ管を示す皮膚の赤い網状影と浮腫が認められた.発生の段階でリンパ管は,静脈の血管内皮の一部がリンパ管内皮に分化して発生する.この段階でリンパ管内皮のポドプラニンと血小板のCLEC -2が結合して血小板が活性化され,放出された顆粒内容が分離を促進すると示唆されている.CLEC-2欠損骨髄キメラマウスの血液では,固層化コラーゲン上に流血条件下で形成された血栓の体積が,野生型に比べて有意に減少していた.マウスの腹腔内毛細血管にレーザーを照射して血栓を形成させるin vivo血栓形成モデルでは,CLEC -2欠損骨髄キメラマウスで血管壁に粘着する血小板数が有意に少なかった.これより,CLEC -2は流血条件下で血栓を安定化すると考えられた.しかし出血傾向の指標であるtail bleedingは有意な増加がみられなかったため,CLEC -2をターゲットとした抗血小板薬は,出血の副作用が少なく病的血栓を抑制する抗血小板薬となる可能性がある.ポドプラニンは他の血球や血管内皮には発現が認められないが,最近,動脈硬化巣には発現が認められると報告された.したがってCLEC -2・ポドプラニンの結合は,病的血栓形成に関与している可能性も考えられる.Current Therapy 2013 Vol.31 No.333193