カレントテラピー 31-3サンプル page 18/30
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血栓性疾患―薬効薬理と病態生理に基づいた治療戦略の展開各種血栓性疾患に対する新規経口抗凝固薬の適応a b s t r a c t*是恒之宏これまで,長い間ワルファリン単独の時代が続いていたが,2011年3月に新規経口抗凝....
血栓性疾患―薬効薬理と病態生理に基づいた治療戦略の展開各種血栓性疾患に対する新規経口抗凝固薬の適応a b s t r a c t*是恒之宏これまで,長い間ワルファリン単独の時代が続いていたが,2011年3月に新規経口抗凝固薬時代が幕開けとなった.2012年12月4日現在,本邦においてはダビガトラン,リバーロキサバンが非弁膜症性心房細動(nonvalvular atrial fibrillation:NVAF)の脳塞栓,全身性塞栓症予防,エドキサバンが膝関節,股関節全置換術術後の深部静脈血栓症,肺塞栓症予防を適応として使用可能である.NVAFに関しては近々,アピキサバンの適応が期待されており,エドキサバンも治験終了が見込まれている.弁膜症性心房細動(valvular atrial fibrillation:VAF)や人工弁置換術,急性冠症候群については現時点で適応がとれていないため新規経口抗凝固薬の使用はできない.本稿では主として心房細動(atrial fibrillation:AF)に対する適応に関して各種薬剤の特性,比較,使い分けなどを私見を交えて解説し,一部整形外科領域の適応についても触れる.Ⅰはじめに経口抗凝固薬は長い間ワルファリン単独の時代が続いてきた.適応症は主として術後静脈血栓症の予防,心房細動(atrial fibrillation:AF)に伴う脳塞栓症予防である.心原性脳塞栓症はAFの最も重篤な合併症であり,その予防はきわめて重要な課題である.脳梗塞の原因となる心房内血栓は,静脈血栓と同様にフィブリンに富んだ血栓と考えられ,臨床的エビデンスからもその予防に抗血小板薬よりも抗凝固療法が有効であることが示されている.2008年に策定された日本循環器学会『心房細動治療(薬物)ガイドライン』では,アスピリンを少なくとも第一選択とせず,ワルファリンをリスクに応じて推奨,あるいは考慮可とすることが示された.この方針はその後,海外のガイドラインでも徐々に受け入れられてきており,2012年の欧州心臓病学会(ESC)ガイドラインではこの方針が踏襲されている.これまで半世紀以上,経口抗凝固薬はワルファリンのみであり,脳梗塞予防効果は高いが,比較的狭い治療域と用量の個人差,食事や他の薬剤の影響,診察ごとの採血による効果チェックなどの問題があり,必要とされる患者に必ずしも十分使用されていない.一方,最近ワルファリンに替わる新しい経口抗凝固薬が開発され,2011年3月には経口直接トロンビン阻害薬ダビガトランが非弁膜症性心房細動(nonvalvularatrial fibrillation:NVAF)を対象に使用可能となった.また,2012年4月には経口Xa因子阻害薬リバーロキサバンが発売された.本稿執筆の時点においてもアピキサバン,エドキサバンがNVAFを対象としてそれぞれ申請中,治験中であり,その進展が期待されている.術後静脈血栓,肺塞栓症の予防には現在,エドキサバンが承認されている.*国立病院機構大阪医療センター臨床研究センター長86Current Therapy 2013 Vol.31 No.3324