カレントテラピー 31-3サンプル page 10/30
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血栓性疾患の種類と病態***ABC50μm100μm図3深部静脈血栓A:悪性リンパ腫(*)の静脈浸潤と圧迫により生じた腸骨静脈血栓の肉眼写真.壁付着部は混合血栓(矢印)で末梢側は赤色血栓(矢頭).B:白色部の組織....
血栓性疾患の種類と病態***ABC50μm100μm図3深部静脈血栓A:悪性リンパ腫(*)の静脈浸潤と圧迫により生じた腸骨静脈血栓の肉眼写真.壁付着部は混合血栓(矢印)で末梢側は赤色血栓(矢頭).B:白色部の組織写真(ヘマトキシリンエオジン染色).顆粒状の血小板と線維性のフィブリンからなる.C:赤色部の組織写真(ヘマトキシリンエオジン染色).血小板とフィブリンの網状構造にエオジンに濃染する赤血球が包まれる.〔参考文献15)より引用改変〕赤色血栓であると考えられているが,通常認められる血栓は白色,混合,赤色血栓の部分が種々の程度に混じり合った複合血栓である.壁の付着部では白色あるいは混合血栓の像を呈し,中枢側(心臓側)や末梢側に進展する部位では赤色血栓の像を呈することが多い(図3A).また,肉眼的に白色を呈する部分は血小板とフィブリンに富み赤血球は少なく,好中球もみられる(図3B).一方,赤色を呈する部分は血小板とフィブリンの網状構造に赤血球が取り込まれた構築をしている(図3C).血栓が壁に付着した部位には内皮細胞を認めない15).肺動脈を閉塞した血栓は,静脈血栓が中枢側に進展したものが剥離し塞栓したものであるが,肺動脈に塞栓すると,そこに新たな血栓形成が付加されるため,修飾された像を呈すると考えられる.この血栓においても血小板とフィブリンに富む成分が混在して観察される.筆者らは深部静脈血栓・肺血栓塞栓症例の組成を検討し,すべての血栓にフィブリン,赤血球とともに多量の血小板が観察され,両血栓の組成に有意な差は認めなかった16).また,血小板とともに接着因子であるフォンウィルブランド因子(von Willebrandfactor:VWF),および血液凝固第Ⅷ因子が局在した17).このような病理所見から,静脈血栓の形成にはアテローム血栓と同様に,血小板も重要な役割を果たしていることが推察される.Ⅶ静脈血栓の形成機序前述したように,静脈血栓の形成では,内皮傷害よりも血流のうっ滞や血液凝固能の亢進がより重要視されている.静脈血栓の発生において,内皮細胞傷害(剥離)が先に起こるのか,また血流のうっ滞が凝固反応を活性化し生じた血栓が内皮に接着するのか,さらには凝固能の亢進が血栓形成の引き金となるのかを判別するのはきわめて困難である.しかし,血栓付着部の病理組織所見からは,内皮細胞傷害が引き金となっている可能性が示唆される.実験Current Therapy 2013 Vol.31 No.325113