カレントテラピー 31-2サンプル page 5/34
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概要:
治療抵抗性高血圧―原因と対策のキーポイント血圧測定と白衣高血圧の問題*矢野裕一朗白衣効果・白衣高血圧は日常臨床でよく遭遇する問題のひとつであるが,その臨床的意義についてはいまだ不明な部分も多い.一方,....
治療抵抗性高血圧―原因と対策のキーポイント血圧測定と白衣高血圧の問題*矢野裕一朗白衣効果・白衣高血圧は日常臨床でよく遭遇する問題のひとつであるが,その臨床的意義についてはいまだ不明な部分も多い.一方,治療抵抗性高血圧を扱ううえで,白衣効果・白衣高血圧の確認は必須となる.なぜなら,治療抵抗性高血圧のうち30~40%程度は白衣効果によるものだからである.本稿では白衣効果・白衣高血圧の一般的事項について言及し,特に治療抵抗性高血圧との関連性および心血管リスクについて述べる.Ⅰはじめに生活習慣の改善を行ったうえで,利尿剤を含む適切な用量の3剤以上の降圧薬を継続投与しても目標血圧まで下がらない場合,あるいは血圧コントロールの良し悪しに関係なく4剤以上の降圧薬を必要とする症例は,治療抵抗性高血圧と定義される.その頻度は集団により異なり,例えば一般臨床の現場で評価した場合は10~30%であるが,高血圧専門外来や腎臓・糖尿病専門外来のような専門性のある施設で評価した場合には半数近くにのぼるとの報告もある.『高血圧治療ガイドライン2009』(JSH2009)に明記されている治療抵抗性高血圧の要因およびその対策を,表1に示した.治療抵抗性高血圧の心血管イベント発症率は正常血圧に比べ2倍程度高いため,その対策は重要である.本稿では,治療抵抗性高血圧を扱ううえで基本事項になる以下の疑問点に言及していく.利尿剤を含む適切な用量の3剤以上の降圧薬,または4剤以上の降圧薬を服用していても外来血圧が140/90mmHg以上あるケースに遭遇した場合,「あなたは治療抵抗性高血圧です」と伝えたが,それは正しいか.実は正答率は60~70%程度である.つまり,30~40%程度は“偽性治療抵抗性高血圧”である.以下,その理由を言及していく.Ⅱ血圧の測定条件の問題JSH2009に明記されている血圧測定条件を表2に示す.現実的には,これらを遵守しているケースはどれほどいるであろうか.しかし,不十分な条件下での評価は偽性治療抵抗性高血圧の原因となる.特に,血圧測定前の5分間程度の安静,1機会の測定時に複数回(2回以上)の評価,適切な長さのカフの使用,測定前に喫煙・カフェイン摂取を避けること,カフの位置を心臓の高さに保つこと,測定中には測定者を含め会話をしないことなどは重要な遵守事項である.2005年には,American Heart Association(AHA)より血圧測定方法について声明が出された1).表2に記載されていない事項として重要な点は,*Faculty(visiting scholar), American Society ofHypertension Comprehensive HypertensionCenter, Department of Medicine, The University ofChicago Medicine/自治医科大学内科学講座循環器内科学部門8Current Therapy 2013 Vol.31 No.2120