カレントテラピー 31-2サンプル page 28/34
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Key words仮面高血圧東北大学東北メディカル・メガバンク機構予防医学・疫学部門准教授菊谷昌浩仮面高血圧とは,随時血圧が正常であるにもかかわらず,診察室外の血圧では高血圧なものを指す.診察室外の血圧とは,....
Key words仮面高血圧東北大学東北メディカル・メガバンク機構予防医学・疫学部門准教授菊谷昌浩仮面高血圧とは,随時血圧が正常であるにもかかわらず,診察室外の血圧では高血圧なものを指す.診察室外の血圧とは,家庭血圧(home blood pressure:HBP)あるいは24時間自由行動下血圧測定(ambulatory bloodpressure monitoring:ABPM)である.仮面高血圧と臓器障害の関連を検討した先行研究のほぼすべてにおいて,降圧治療の有無にかかわらず,仮面高血圧群の臓器障害の程度は正常血圧群または血圧管理良好群に比べ重症であることが報告されている.仮面高血圧は予後に関しても不良であり,臨床的に高リスクな病態であることが明らかにされている.また,脳心血管疾患発症を予防するうえで,仮面高血圧を適切に治療・管理することは非常に重要である.その適切な同定・管理のためには,診察室外の血圧であるHBPまたはABPMの実施が不可欠であり,日本高血圧学会から刊行された『高血圧治療ガイドライン2009』において,仮面高血圧の治療も含めた24時間にわたる厳格な血圧管理の重要性が述べられている.そのため,本ガイドラインでは暫定的な値ではあるが,新たにHBPの降圧目標が設定された.仮面高血圧を呈する病態は複数あり,職場におけるストレスが原因で診察室外の血圧が高値を示すいわゆる職場高血圧や,早朝・就寝時に測定したHBPは正常レベルにあるが,夜間血圧のみが高値である夜間高血圧などが挙げられる.しかし,仮面高血圧の主要な病態は早朝高血圧である.早朝高血圧とは朝のHBPまたは早朝の時間帯のABPにおける高血圧であるが,以下のように2つのタイプに分類されている.1夜間から早朝にかけて急峻に血圧が上昇し,結果的に早朝血圧が高血圧域(朝のHBP≧135/85mmHg,早朝の時間帯のABP≧135/85mmHg)に達するサージタイプ,および2夜間に血圧が低下せず,夜間から早朝にかけて持続的に血圧高値を示す持続タイプ,である.これら早朝高血圧の主な原因には,交感神経系やレニン・アンジオテンシン系(RAS)の賦活化が考えられているが,降圧治療中患者においては,朝方に服用した降圧薬の不十分な薬効持続が,翌朝の早朝高血圧をもたらしている場合も数多く見受けられる.早朝HBPに基づく仮面高血圧の患者背景として,BMI高値,随時血圧比較的高値,飲酒習慣,降圧薬多剤服用が知られている.このような患者は随時血圧が正常であっても,積極的にHBPなどの診察室外の血圧測定を行い仮面高血圧を見逃さないよう注意する必要がある.Current Therapy 2013 Vol.31 No.2 105217