カレントテラピー　31-2サンプル page 13/34

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治療抵抗性高血圧―原因と対策のキーポイント腎神経アブレーションにより高血圧，慢性腎臓病，心不全は改善するか？＊1＊2＊2熊谷裕生・尾田高志・大島直紀・山本浩仁郎＊2＊2＊2武智華子・千田将光・只野裕己・松原....

治療抵抗性高血圧―原因と対策のキーポイント腎神経アブレーションにより高血圧，慢性腎臓病，心不全は改善するか？＊1＊2＊2熊谷裕生・尾田高志・大島直紀・山本浩仁郎＊2＊2＊2武智華子・千田将光・只野裕己・松原秀史＊2＊2＊2伊藤誓悟・釘宮愛子・冨永健太・中山晋吾＊2・・＊2＊2本態性高血圧だけでなく，慢性腎臓病（chronic kidney disease：CKD），糖尿病，うっ血性心不全などにおいても心臓，細動脈，腎臓への交感神経活動が亢進している．2009年にオーストラリアの研究者が大腿動脈からカテーテルを挿入し，腎動脈の内側から，外側に侵入する腎神経束を焼灼するという画期的な方法を考案した．1回だけの腎神経アブレーションにより，2年もの長期間，本態性高血圧患者の血圧が安定して低下している．腎神経アブレーションは高血圧のみならず，タンパク尿の減少，腎血管抵抗の低下，耐糖能の改善にも寄与することが臨床試験で報告されている．さらに，うっ血性心不全患者の心機能，臨床症状，長期予後を改善させることが期待される．Ⅰはじめに図1に，中枢神経系が全身の交感神経活動を制御するメカニズムを示した（熊谷作成）．交感神経中枢である延髄吻側腹外側領域（rostral ventrolateralmedulla：RVLM）のニューロン（神経細胞）の電気活動亢進は，脊髄の中間外側核の電気活動を亢進させる．さまざまな高さの中間外側核から遠心性に出ていく末梢交感神経活動が亢進し，心臓，腎臓，細動脈などに作用して血管収縮，血圧上昇，循環血漿量の増加をもたらす1）～4）．慶應義塾大学腎臓内科の飯ヶ谷と昭和大学生理学の鬼丸らは，RVLMの交感神経中枢ニューロンと心臓交感神経が出ていく胸髄中間外側核との間の電気伝導を可視化すること（オプティカル・イメージング）に成功した5）．心臓では，交感神経活動の亢進はβ1受容体を介して心拍数と心収縮性を増加させ，それにより心拍出量が増し血圧は上昇する．しかし交感神経亢進が長期に続くと心肥大が生じ，心不全に至る．細動脈への交感神経活動が亢進すると，α1受容体を介して血管が収縮し，血圧が上昇する．交感神経というのは増殖因子でもあるので，交感神経活動亢進が長期にわたると，血管壁が肥厚し内腔が狭くなって血栓ができやすくなる．腎臓への遠心性の交感神経活動が亢進すると，1）α1受容体を介して尿細管でのナトリウム（Na）再吸収が増加する．これにより有効循環血漿量が増加して血圧が上昇する．それゆえ腎神経束を電気的アブレーションで傷害すると，血中から過剰のNaが喪失する恐れがある．2）α1受容体を介して，腎動脈や細い腎内血管を＊1防衛医科大学校腎臓内分泌内科教授＊2防衛医科大学校腎臓内分泌内科Current Therapy 2013 Vol.31 No.217967